ドグラマグラ 9

シュバー。
小さなガス栓のようなモノ。それの開栓に反応して、
ポルポの入ったホルマリン溶液が抜けて行く。

  チョコラータ:「ウフフフフ。さぁて、恐怖を見せてもらおうかねぇぇ?」

カメラに写る3階の部屋。
いままさに通り過ぎようとしていた5人が、
異常に気づいて振り返るのが見えた。

  ギアッチョ:「今の音はなんだァ?」
  ホルマジオ:「ネズミ…じゃないよな?」
  イルーゾォ:「俺ネズミ苦手…」
  ジェラート:「僕も…」
   
みると、ポルポの入ったガラスケースだけが様子が違っている!!
ああ、気色悪い物また見てしまった。
最悪と言った顔で、顔を見合わせる。
ソルベが、恐る恐る近寄った。

    ソルベ:「中に入っていた液体が抜けたようだな…」
  ジェラート:「ホルマリンが抜けたからと言って突然腐るわけじゃないから」
    ソルベ:「でもな…ジェラート…この…なんか動いてるように見えるのはなんだ?」
  ジェラート:「え?動いて…気、気持悪い、何ッ!?」

ジェラートがソルベに抱きつく。
あー熱い熱い。ッと、こんなこと言ってる場合じゃない。
動いているのは中の死体の腹の部分。
ウゴウゴと、何かが中でうごめいているような…。
ぞわぞわぞわぞわ。全員の背中に鳥肌が立つ。
ズボリ。
ズボリ…
腹が動き、そこから何かがぬるりと出てくる。
アアッ、もう駄目、気持悪い!
途端にギアッチョが叫んだ。

  ギアッチョ:「く、蜘蛛だとぉぉ!?ギィヤァァア!」

どうやら蜘蛛が苦手のご様子…
死体の腹から出てきた蜘蛛は、ポルポの体を半分に割って出てきた。
それなりの大きさ、と言うことだ。1メートルはある!

 チョコラータ:「ンックック。遺伝子改造の結果だよ〜ン。食われておしまいッ!」

気色悪い物作るなーッ!
ガラスケースをバキリと割って出てきたソレに、ギアッチョがへなへなと座りこむ。

  ギアッチョ:「こ、腰が…イヤ、俺蜘蛛イヤッ!」

ギアッチョの初めて見せた情けない顔。
本当に腰が抜けてしまったらしく、内股でへたり込んでいる。
壁に寄りかかって目を丸くしているイルーゾォ、凝固しているホルマジオ。
ジェラートに至っては、無表情のまま、冷や汗をかいている。
1メートルの蜘蛛。何がイヤって、ウブ毛がイヤ。
グニグニ動く口元がイヤ!ガザガザと音を立てる爪のついた脚がイヤーーーー!!
アア、イヤだらけ。
不意に蜘蛛が、シュルリと糸を出す。
この糸もイヤーーー!!
ペタリ。
足元に糸が絡みついちゃって声も出ない人がいるよ…
足に?蜘蛛の今日のご飯決定!?

   イルーゾォ:「……!!!あ、うぞぉぉぉ!!」
   ホルマジオ:「イルーゾォ!?」
 
今夜のお夕飯決定イルーゾォ?
足に絡み付いた糸をズルリ、ズルリと引っ張り出す大蜘蛛。

   イルーゾォ:「離せこの馬鹿蜘蛛ーーッ!」

マンインザミラーが現れ、蜘蛛を叩く…
スカ。
距離があってとどかない!!

   ホルマジオ:「イルーゾォ!鏡に入れば!」
   イルーゾォ:「同じだろぉ!俺が入ってもコイツの標的が変わるだけだろ!
          ぶったおさない限り、なにもかわらねぇ!」
   ホルマジオ:「とにかく逃れるのが先決…!」
   イルーゾォ:「このまま…近づいて叩く…
          こ、このまま大人しく食われてたまるかッ!」

なんだか意気込みを見せたイルーゾォ!
ちょっとカッコイイぞ!?
蜘蛛がまた糸を吐く。
グリュリ。
あ。

   ホルマジオ:「…。叩けるのか?」
   イルーゾォ:「腕が動かないよぉぅ」

蜘蛛の糸は見事イルーゾォの腕に命中、からめとられてグルグル巻きのイルーゾォ。
コレじゃなんにも出来ません…
ってまずいじゃんそれー!!

   イルーゾォ:「食われるのイヤすぎー!!」
   ホルマジオ:「蜘蛛は毒で相手を溶かしながら飲むんだ、
          毒さえ注入されなければッ!」
     ソルベ:「グダグダ言ってる間があったら殺しゃーいいんだろうがッ!」

あ?ホルマジオがソルベの存在に初めて気がつく。
そう言えばさっきからずっと黙ってたねソルベ?
クルリ。
振り向こうとしたホルマジオの肩の脇からにゅっと長いものが顔を出す。
この、長いモノは、なんかこう、鉄のような…固そうな黒くて長い…?

     ソルベ:「吹っ飛びな」

ぱっとジェラートが耳をふさいだ。
ガラララアララアラララァアアアアア!
連続した高い爆音が密閉された部屋に響き渡る。
耳元で爆音を聞いて耳がジーンのホルマジオ。
完全に振り向くと、そこにいたのは両手に機関銃を構えたソルベだった。
蜘蛛が白い煙を上げて、裏返しになる。

     ソルベ:「持ってて良かった?」
   ジェラート:「最高」
     ソルベ:「イェイ♪」

重い機関銃を片手で構え、両手に2丁。

   ホルマジオ:「…お前らスタンド使いだろ…?」
     ソルベ:「コレは趣味。」
   ホルマジオ:「おまえら…刑事だろ?」
     ソルベ:「ソレも趣味。」
   ホルマジオ:「お前らホモだろ?」
     ソルベ:「ソレも趣味…関係あるのかソレ。」

呆然としたままつぶやくようにホルマジオが言う。
ニヤニヤ笑っているソルベ。傭兵みたいだ!カッチョイイ。

   ジェラート:「やっぱ日本製よりドイツ製のがイイ?」
     ソルベ:「使ってみるか?」
   ジェラート:「僕は爆薬のほうが好きだな。」
   
ニコニコし合いながら、幸せそうに、ぶっ飛んだ会話。
腰を抜かしていたギアッチョが蜘蛛が動かなくなったのを見て、はいずるように立ちあがる。
ヨレヨレのお爺さん状態のギアッチョ。ちょっと笑えるが、ココで笑うと後が怖いぞ!

  ギアッチョ:「そ、そう言うもん持って来てんなら、
         さっさとやりゃイイじゃねぇか…」
    ソルベ:「こないだ買ったばっかりだったんでな、
         慣れてないから組みたてるのに時間がかかったんだ。
         これでも腰が抜けたお坊ちゃんのために急いだんだぜ?」

キィィィィ。
画面の向こうとこっちがわで怒りの音を立てる人間が二人。
ギアッチョがソルベに掴みかかろうとしている画面のこっちで、
チョコラータが頭をかきむしっていた。
あーあ、チョコラータ頭ぐちゃぐちゃ。

  チョコラータ:「俺の思考錯誤の結果が…いとも簡単に!
          イヤ、コレだけ粘るやつらの絶望の顔を見るのが俺の至福ッ!
          今、俺は最高に燃えているハ・ズッ!バァァア!」

なんだかノリが変ですよチョコラータ君。
どうやらポケモンの見すぎでノリが移っているご様子。

 チョコラータ:「仕方ない…本当に仕方ないねぇ…
         俺のスタンドを舐めたらあかんぜよ…。
         完全にカビさせて、
         跡形も残さず綺麗に海に捨ててやるから覚悟しなァー−−−ッ!」

バン!
イスを蹴って立ちあがる!
んで座りなおす。
なにやってんだチョコラータ。
しかし意気込みはすごいぞ!最終決戦ナリか−−−ッ!?
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