ドグラマグラ 7

    ジェラート:「実験材料…なんですか。」
   チョコラータ:「まだ質問があるのかい?しょうがない患者だねぇ…」
   
ジェラートがそっとチョコラータに寄りそう。
チョコラータがジェラートの小さなささやきを聞く。
ジェラシーで歯軋りするソルベ。あきれるギアッチョ。
ジェラートの唇がそっと呟いた。

    ジェラート:「捕まえた」
   チョコラータ:「んんんん??」
    
ジェラートがチョコラータの頭を抱く。
チョコラータのこめかみに当てている物、銃口。

    ジェラート:「僕が操られてるって、思ってた?」
   チョコラータ:「ま、まさか、催眠が不充分だったかな?」
    ジェラート:「ヘタクソ。」
    
階段の下から、怒鳴り声がする。
ギアッチョだ。青筋から何から、立て尽くしたような顔をしている。

    ギアッチョ:「ジェラート!どう言うことだ全部話せ、今話せ、すべて話せ!!!」
    ジェラート:「簡単に言うと、本当のターゲットはコイツだったんだ」
   チョコラータ:「……驚いたよ。まさかこのチョコラータをだますとはね。
           腹心になり下がったフリをしてね。
           ずいぶんとナメたマネしてくれる…
           そもそも俺がなにかしたと言うのかね?エ?」
    ジェラート:「分かってて言わせるつもり?」
   チョコラータ:「なんだろうねぇえ?」
    ジェラート:「この館に美術品を集めているね?」
   チョコラータ:「すべて合法的にオークションで競り落とした物だよ?アレが何かね?」

ゴリ。
ジェラートの持つ銃が、チョコラータのこめかみに強く押し当てられる。
その下でニヤニヤ笑うチョコラータ。
息を飲むソルベとギアッチョ。

    ジェラート:「美術品といっしょに飾ってあるあのホルマリン漬けは何?」
   チョコラータ:「……」
    ジェラート:「アレはすべて、美術品の持ち主だった人間だね」
   チョコラータ:「ずいぶん調べたもんだ…
           このまま俺が大人しく捕まると思っているのか?」
    ジェラート:「思ってないから、ソルベとギアッチョがいるんだ」
    ギアッチョ:「そう言う計画があるならあると言いやがれ!俺達は手駒か?アア?!」
   チョコラータ:「ウフ。フフフフフフフ」

ギクリ。気持ちの悪い笑い声に、さすがのジェラートも無表情を崩す。
ドラえもんがひっくり返ってオカマになって悪の総司令官になったような笑い声。
なんやねんそれ。
  
    ジェラート:「な、なに?」
   チョコラータ:「馬鹿だねぇ。ジェラート。
           この階段の下にいる全員が俺の人質なのに気がつかないかな?」
    ジェラート:「どう言う…こと?」
   チョコラータ:「俺のスタンド能力を忘れたのか?
           ヤツらがカビに襲われて崩れるまでもう少し…
           少々お喋りがすぎたんじゃァないかね?」
    ギアッチョ:「カビだと!?カビ?!」
   
そう言えば!チョコラータの背後にうっすらとグリーンデイが居座っている。
この危機を鏡の中で聞きつけるイルーゾォ。
そんな馬鹿な、ちょっと待ってカビ?カビはえるの?!
ホルマジオを揺り起こして、カビ、カビ、と病気のように繰り返している。
ホルマジオが寝言のように二言三言イルーゾォに何か言った。
外ではグリーンデイが、うっすらと煙を噴き上げ始めている…
ガクン。塔自体が小さく小刻みに揺れはじめた。少しずつ沈んでいる?!

   チョコラータ:「足元から這い上がるカビの恐怖に怯えるがいいッ!」
    ジェラート:「スタンドを止めて!撃つよ!?」
   チョコラータ:「もう遅い!グリーン・デイ!」
 
見る見るうちに広がるカビ!とたん、ソルベが崩れるように消え、
鏡だけがそこに転がった。

   ジェラート:「うそ!!ソルベ!?いやああ!」

驚愕するジェラートのスキをついて腕を振り払う。
ドン、と階段から突き落とすと、チョコラータは踵を返した。
相変らず「壊れたドラえもん笑い」をしている。キショ。

  チョコラータ:「そのままカビに食われてクズになるがイイ!ウフフアウアハハハア!」

扉の近くにいたギアッチョが、形相を見せる。
ジェラートが階段のフチに捕まって落下を止める。
ゾク、とギアッチョの足元をカビのいやな感触が襲って…。
あれ?カビが生えません。どうしたのかな?
って、これまたバレバレ?

   ギアッチョ:「ホワイトアルバムゥゥウウ〜気にいらねぇぇ。納得いかねぇゾォォ」

凍りつくような冷気。
って言うかもう凍ってる。
鏡の中で凍え死にそうなイルーゾォとホルマジオ、
二人に引きずられて鏡の中、階段の上まで上がるソルベがいた。

   イルーゾォ:「さむ、さむーッ!」
     ソルベ:「た、助かった…ありがてぇ、恩に切る!!」
   イルーゾォ:「目の前でカビ生えて人が死ぬとこなんか見たかねぇ、キショ悪ィ
          マインインザミラーの世界には、俺が許可した以外の
          生命のあるものが入り込むことはないッ!」
   ホルマジオ:「しっかし使えるスタンドでいいナァ…」
     ソルベ:「って言うか、ギアッチョは?!」
   
そう、そのギアッチョのおかげでやたらと寒いんだね。
超低温の世界ではすべてのモノが動くことを止める。
むろん、カビも。だ。
何たる組み合わせ。何たる運のいい組み合わせ。
イルーゾォとギアッチョがいてよかったね。普段うるさいけど、こう言う時は役に立つ。

   ジェラート:「ギアッチョ…階段の上にあがって。
          自分の現在位置から上にはカビは生えて来ないから…」
   ギアッチョ:「ああ。先に鏡投げんぞ!受け取りな!」

ひょい。
鏡が宙を舞う。ジェラートがそれを受け取る。
その一瞬の内で、鏡の中では巨大な大騒ぎだった。
ギアッチョが鏡を手にした瞬間、吐く息が凍り、
「バナナで釘が打てます」って状態になったのだ。
一瞬息までが凍り、死にかけるイルーゾォとホルマジオ、そしてソルベ。
その一瞬あとに、体温が戻り、なんだか生き返ったような心地。
全員が階段の上に来る。カビは這い上がってこない。
ホルマジオの意見により、全員が一旦マンインザミラーの中に入る。
ここなら、会話がスムーズだ。イルーゾォは機嫌が悪かったが。
ソルベを見つけるなり、その首にジェラートが抱き付いた。
ホルマジオがイルーゾォにパクパクと口をあけて見せる。
イルーゾォが知ったような顔をして、ウン、と頷く。
事件の概要は、ジェラートの説明によると、こうだった。
チョコラータが競り落とした美術品の元オーナーが、謎の失踪をとげている。
それを調べるように命ぜられたジェラートが行きついたのがここ、この屋敷。
スクアーロとか言う魚のスタンド使いに見つかって、幽閉まがいの状態になった…

   ギアッチョ:「その時に、催眠術をかけられたってのか?」
   ジェラート:「それで、チョコラータに言われるままにライヘを集めるフリを…。」
     ソルベ:「どうして言わなかったんだ?」
   ジェラート:「いつでもセッコが見てたから…」
   ホルマジオ:「セッコってのは…皮のスーツかぶった野郎か」
   ジェラート:「うん。アイツは地面の中ならどこでも移動できる能力を持ってる」
   ホルマジオ:「俺の服泥まみれにしやがって…ゆるさねえ」

むっとした顔をしてホルマジオが言い放つ。
泥の中に引きずりこまれて、気を失わされたのがよほど口惜しかったのだろう。
「俺は絶対お礼参りします」と言うヤンキーの顔になっている。

   イルーゾォ:「1つ。なんで俺達まで巻き込まれなきゃならねぇんだ」

挙手したイルーゾォがぶっきらぼうに言う。
挙手好きだね〜イルーゾォ?

   ジェラート:「スクアーロ倒せるタイプのスタンドを持つ人間が欲しかったの。                        とにかく中に入らなければ、チョコラータに手錠かけられないしね。
          ライヘを集めるフリして、ちょっと選んだら引っ掛かっただけ」
   イルーゾォ:「だけ?!だけってなあー!こ、この」
     ソルベ:「やるなら俺が相手になるぞ」

ハッ。そういえばこいつらホモだった。
突然大人しくなって、そろそろと距離を取るイルーゾォ。
あんまり意識すると、逆に変だって。
意識することイコール興味であると言ったのは、どこの精神科医だったか。
ところでチョコラータは????
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