ドグラマグラ 3

塔の中から歌が聞こえる。
集まれライヘ。私のライヘ。
もっと集まれ、もっと集めよ。

午前1時。暗闇で雨音をはじく車。

  ジェラート:「天気予報…。当ったね…。」
    ソルベ:「ああ…。」

館のある岬から数百メートル。
そこに車を止めて、様子を伺う…
窓ガラスに叩きつける雨。
外に出るのが面倒くさい、そんな顔でギアッチョが窓をにらみつけていた。怖わ。
その車の遥か先を歩いていく二つの影。

  イルーゾォ:「うひゃあ、なんて雨だよ!」
  ホルマジオ:「天気予報ってのは見て損はねぇもんだな!」
  イルーゾォ:「…このまま、真正面から行くの?泥棒らしくねー…」
  ホルマジオ:「陸続きに行く以外、ねぇじゃねぇかよ〜?」
  イルーゾォ:「警備とかいねぇのかな…」
  ホルマジオ:「ちっ、ぬかるみ踏んだ…」

強い雨、風。岬ごと崩れてしまわないだろうかと言うちょっとした不安…
ビクビクしながら1歩1歩歩いてみる。
イルーゾォ達からは、車は見えない。雨と、闇がそれを紛らわせる。
大きな稲光が、目の前の空を行きすぎる。

  イルーゾォ:「ひひ、光ったっ!」
  ホルマジオ:「近けぇな〜」
  イルーゾォ:「お、落ちたりしねぇよな?!」
  ホルマジオ:「黒い穴が開いて、電流が心臓通ったら一発だってよ」
  イルーゾォ:「やめろよ…脅かすなよぅ…」
  ホルマジオ:「ほら、俺のほうが背が高いから、お前大丈夫じゃねぇの?」
  イルーゾォ:「あ、そっか。」

なんか違うぞ二人とも。
足元に気をつけて。ここで終わるなら、ライヘの資格はないよ。

  ホルマジオ:「ん?なんかいる…」
  イルーゾォ:「な、なに?!」
  ホルマジオ:「今、なんか跳ねたような気が…。」
  
ホルマジオの言葉に、恐る恐る回りを見渡す。
稲光に肩をすくめる。
反射で館までへの道のりがあと少しだと言うのが見えた。

  イルーゾォ:「なんも…いないんじゃないか?」
  ホルマジオ:「なぁ…イルーゾォ?」
  イルーゾォ:「な、なに?」
  ホルマジオ:「陸に上がる魚は?」
  イルーゾォ:「日本にムツゴロウとか言うのがいるけど…?」
  ホルマジオ:「それはピラニアくらいの大きさか?」
  イルーゾォ:「いや、なんかこのくらいの、ちーさな…」

と、ての幅をすぼめて、五センチくらいの隙間をつくって見せる。
隙間を…。
隙間の下に何かが見える?

  イルーゾォ:「!!…スタンドだッ!」
  

その場から飛びすさる。その勢いでずっこけるイルーゾォ。
ホルマジオが動かずに足元を凝視している。

  イルーゾォ:「本体はどこだよ!?」
  ホルマジオ:「コレじゃ見えねェ!遠隔型のスタンドかもしれない」
  イルーゾォ:「お、俺は本体いなきゃ、お手上げだぜ!?」
  ホルマジオ:「俺だって攻撃してなんぼなんだ…どこに行きやがった…」

バシャアアアアアン!
目の前のぬかるみから、何かが一直線に飛んでくる!

  ホルマジオ:「チィィィ!防げ!リトルフィート!」  

ガイン!リトルフィートの腕の爪が、何か固い物に当ってはじかれる。

  ホルマジオ:「固ってぇ…コラ、イルーゾォ!手ぇ貸せ!」
  イルーゾォ:「貸せって言ったって…!」
  
ばらばらの方向から、銀色に光る物がホルマジオに向かって飛びついてくる。
すんでのトコロでやっとそれをかわすのが精一杯だった。スタンドの数は一体。

  ホルマジオ:「動きが、読めねぇってのはどうしてだ!?」

あざ笑うかのように、目の前のぬかるみに、何かがズブリと浮かび上がる。

  ホルマジオ:「魚…魚のスタンドだ!」
  イルーゾォ:「魚?!」
 
にやり、と、それが笑ったような気がする。
それが、一瞬のうちに目に写らなくなる。

  ホルマジオ:「消えたっ!?」
  イルーゾォ:「な、なんなんだよ!」
  ホルマジオ:「魚ってことは、水の中を移動してる可能性が高けぇな」
  イルーゾォ:「ど、どこに消えやがったァァ!」

ビシュ。
肩が突然熱くなる。
イルーゾォの目の前に着地したそれは、何かを食んでいた。30回以上良く噛んで。

  イルーゾォ:「い、いいイってぇぇぇぇ!コイツ、コイツ俺の、俺の肉くってやがるゥ!
         マン・イン・ザミラー!」

イルーゾォのスタンド、マンインザミラーが魚を叩く。
すっと消えた魚が一瞬見えた。
勢いで叩いたぬかるみの泥が、四方に飛び散る。
こっちだよ、捕まえてごらん?
弱肉強食?食われるのはいつも魚とは限らない。
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