続・ご近所ジョジョ物語
ポルナレフ&デーボ編・第3話「束」

                       


そして10分後…
ポルナレフは、決心していた。
デーボの車の後をつけて、行く先を調べる。
家に到着したのか、車が止まる。
そそくさと、音羽さんを家に入れるデーボの姿が見える。
ダマされているんだ…なんとか、音羽さんにこのことを伝えたいが…
デーボが中に入った隙に、表札を確かめる。
なんだか分からんつづりが書いてある…
しかし、その中にはOTOWAのつづりも、
SUZUのつづりもなかったところを見ると…


ポルナレフ:デーボとかいう男の家に…同棲しているのかッ!?
      これまた大ショックだァァァッぁぁッァあ


頭を抱えて座り込む。
このショックは痛かった。
旦那様って言うのも痛い。同棲も痛い。
何よりもダマされているなんて、許さん!
おれが天誅を下して、音羽さんを自由にするんだ!

そう決心してたち上がろうとしたポルナレフの目の前に、
ゆらりと一つの影が現れた。
座り込んだ目の前にあるハーレーのきらめく輝きの中に…


ポルナレフ:…これは…?!


後ろを振り向くと何もいない。
もう一度ハーレーを見る。
写りこんでいるのは…


ポルナレフ:スタンド?!これは一体…!?


立ちあがって、回りを見渡す。
何もいない。誰もいない。
本体の位置も掴めない。
もう一度目線を戻した時には、もうその影は消えていた。
ハーレーには何も写ってはいない。


ポルナレフ:一体…なんだったんだ…?
      デーボとか言うヤツのスタンドとは、また違ったタイプだ…
      まさか、オレに気付いて、様子を探りに来たのか!?
  デーボ:まだいたのか。
ポルナレフ:?!貴様っ!?やはり俺を見張っていたな?!
  デーボ:何?見張っていた…??
ポルナレフ:とぼけんな…仲間のスタンドを使って、オレを見張っていたろう。
  デーボ:スタンド…?!他に、スタンドがいたのか?!どう言うスタンドだ?!
ポルナレフ:とぼけんのもいいかげんにしろよ〜この野郎ッ!
  デーボ:まさかとは…思うが…ヤツが…
ポルナレフ:ああん?てめぇ、串刺しにされてぇか
  デーボ:何かに写っていたろう。
ポルナレフ:あ?
  デーボ:そのお前が見たというスタンドは。
ポルナレフ:知ってんじゃねぇか!この詐欺野郎…
      女の子をだますなんて…絶対にゆるさねぇ!ここでお前を倒す!


チャリオッツを出すと、その剣に何か写ったような気がした。
デーボがスタンドを構える。
エボニーがデーボの前で防御の姿勢を見せる。
それはわかっていた。
それよりも気になっていた。


ポルナレフ:デーボ、貴様、正々堂々と…!
  デーボ:なんだと?
ポルナレフ:2対1でやろうなんて男の風上にもおけねぇ…
  デーボ:だからなんだと…


そういいつつ、振りかざしたまま止まっているチャリオッツの剣に目を止める。
途端、キラリと光ったような気がした。


  デーボ:!?J・ガイル?!
ポルナレフ:許さん!二人がかりなら倒せると思ったか!
  デーボ:なんのつもりだ、J・ガイル!どこにいる!何をしようとしている?!
ポルナレフ:何…?


ポルナレフの方を見ようともしないデーボ。
ハングドマン。そのスタンドはJ・ガイルを本体とする。
デーボの様子の変化に戸惑いながらも、チャリオッツの剣を見定める。
すでに…いない!?


  デーボ:お前の目の中だ…いま、J・ガイルのスタンドは、
      お前の目の中にうつった…
ポルナレフ:俺の目の中?!
  デーボ:うつる物の中を移動し、そこから攻撃できるスタンド…だ…
ポルナレフ:お前の仲間ではないのか!?だったら何故…
  デーボ:離れてくれ!俺を見るな。攻撃対象はオレだ、多分…
ポルナレフ:……デーボ…俺がこいつの能力を利用するとは考えもしないか
  デーボ:何?!
ポルナレフ:お前が鈴さんをだましていることには変わりない。お前を倒す!
  デーボ:騙してるって…一体…俺が?鈴さんを騙してる?
ポルナレフ:そうだろうよ。
  デーボ:お前勘違いもいいかげんに…!


途端、キラリと光る!


  デーボ:ち…しまった!


防御態勢にはいる!
……が、攻撃されない…。


ポルナレフ:?
  デーボ:俺じゃないと言うことか…?何をするつもりなんだ…一体…!
ポルナレフ:アンタ、J・ガイルとはどういう関係だ?
  デーボ:昔の仕事仲間さ。おそらく俺が仕事をやめたんで根に持ってるんだろう…
ポルナレフ:殺しか
  

的をついた返答に、一瞬言葉が詰まる。
とがめられているような気分…


  デーボ:だったらなんだってんだ
ポルナレフ:そのJ・ガイルってヤツはお前の復帰を急かしている
      …そう言うことらしいな
  デーボ:そう言うことだ。
ポルナレフ:そいつは、汚い野郎か?
  デーボ:俺よりはるかに。
ポルナレフ:もしかして、もしかすっと…
  デーボ:……まさか?!まんまと引っかかったって訳か?!
      そんな、訳…いや、…ありえる!


そう叫んで家に飛び込む!
ポルナレフも後を続く。
考えられるのは一つ。


  デーボ:鈴…さん…ま…さか…そんな…
ポルナレフ:やっぱり…か!


白い空間。
ベッドの上の、何もない空間。
鈴の姿がない。
そこには切り刻まれた、ベッドが。
引き裂かれたシーツの裂き跡が、文字に見えた。

TAME(服従)


  デーボ:人質のつもりか…


唇を噛んで、横を向く。
ふつ、と、血が湧き出す。
切れた唇の血が、甘かった。



  デーボ:心の傷で呪いをかけるのは始めてだ…
ポルナレフ:……
  デーボ:ゆるさねぇ…殺してやる…しかし…どうやって…


頭を抱えてベッドに座りこむ。
どうしようもない。
いない。
いない。
鈴が、ココにいない。
自分の責任、自分のせい。
自分があんな人生を送っていたから…
自分が、かかわったから…


  デーボ:やはり、俺じゃ駄目だったんだ…
      俺は、そう言う世界の人間だったのか…
ポルナレフ:すまん!
  デーボ:なに?
ポルナレフ:今更わかった。アンタと音羽さんは好きあってる…本当だったんだな…
  デーボ:もうイイんだ…俺は、もう戻れない筈だったんだ、もともと…
ポルナレフ:アンタ、その程度か?!
      俺だったら音羽さんを助けに行く!あんたの気持ちはその程度か!
  デーボ:俺が戻れば、殺し屋に戻れば!鈴さんは平穏に生きられるだろう
ポルナレフ:……それがお前の騎士道か?
  デーボ:助けに行けと?
ポルナレフ:出来ないか
  デーボ:危険が多すぎる…
ポルナレフ:アンタ、音羽さんと一緒にいたいか?
  デ−ボ:な、何を…
ポルナレフ:赤くなってる場合じゃねぇだろ。どうなんだ。
  デーボ:お前だって好きなんだろう?お前の方が鈴さんは幸せかもしれん…
ポルナレフ:音羽さんの気持ちはほったらかしか!
  デーボ:!
ポルナレフ:お前を選んで俺を選ばなかった音羽さんの気持ちはほったらかしか!
      そして俺のこの気持ちは、どうでもイイと言うのか!
  デーボ:……お前…
ポルナレフ:大切に思う気持ちってのは人それぞれだろうがよ…でも…
      音羽さんはお前がイイんだろ?
      その気持ちを大切にしたいって思う俺は、
      ……この俺の気持ちは、どうしたらイイんだよ…


言葉が出ない。
俺は、俺のことしか考えてなかったか?
鈴さんは俺を選んでくれた。無条件に。
ただ、好きだと思った。
俺もそうだし、鈴さんもそうだった…


  デーボ:俺は…
ポルナレフ:どうするんだ…踏みにじるのか?
  デーボ:どうしたらイイか分らない…のが今の気持ちだ…
ポルナレフ:…ち…
  デーボ:だが俺といると、こんな目に会う。
ポルナレフ:守れる自信がないか
  デーボ:ある。
ポルナレフ:あるなら助けりゃいいような気がする、俺は単純すぎるか…な?
  デーボ:いいや。
ポルナレフ:随分と臆病な大人だな…
  デーボ:……そうだな
ポルナレフ:見そこなったぜ。その程度のヤツが音羽さんの恋人とはな。
      イイ。俺が助ける。お前はおウチで泣いてな。
  デーボ:馬鹿かお前は、鈴さんをお前にまかせられるか
ポルナレフ:おめぇみたいなヘナチョコ野郎じゃ
      何も出来ねぇで奴隷になるのがオチだろうがよ
  デーボ:奴隷になってでも助ける。それが俺の騎士道だ。
ポルナレフ:……そう言う…考え方は初めてだ…
  デーボ:だが奴隷も噛みつく事がある。
ポルナレフ:そりゃいい!
  デーボ:噛みついてみるか?
ポルナレフ:俺の牙は鋭いぜ。音羽さんを誘拐だなんて、ゆるさねぇ!


ぐ、っと握手を交わす二人。
戦争が今始まる。
手を離さないまま、ポルナレフがそっと言う。


ポルナレフ:で、コレからどうする?
  デーボ:皆目見当がつかない


行き先不安な戦線ではあったが…

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