続・ご近所ジョジョ物語
デーボ編・第2話「ストーカー」

                       

そして次の日の夜。
風邪を引いた猿にてこずったデーボは、いつもよりも帰りが遅かった。
家に入って、あれ?となる。
いつもの鈴の出迎えが、ない。


居間に行くと、テーブルで寝てしまっていた。
ちょっと安心して、鈴を揺り起こす。


デーボ:風邪引くぞ
  鈴:…んや?
デーボ:って、顔赤いじゃないか…ちょっと熱はかって見ろ!


寝ぼけまなこの鈴に、体温計を渡す。
ぼんやりとそれを眺める鈴。


  鈴:…あれ?


デーボに始めて気がついて、きょろきょろと辺りを見まわす・・


デーボ:大丈夫か?
  鈴:あれれ?こんな時間ですか…すいませんデーボ様寝ちゃいました…
デーボ:だから先に寝ててイイって…身体、何ともないのか?
  鈴:どうしてですか?…あれ?鈴いつのまに体温計なんか持ってきたんだろう??
デーボ:それは俺が渡したんだ。
  鈴:えー?寝ぼけてますね、鈴…。
デーボ:熱、はかってみろって。


やっとのことで熱をはからせる。
はかっている間中も、ボーっとしている鈴。
少しして、デジタル体温計の電子音が鳴った。


  鈴:ひゃあ!なんか鳴った
デーボ:おいおい、体温計だよ
  鈴:あれ?鈴いつのまに体温計はかってたんだろう
デーボ:はー…はいはい。それ貸してくれ……って。だ、大丈夫か?これッ…
  鈴:はーい?
デーボ:お前、39度6分って!高熱じゃないか!
  鈴:そんなにありますか…
デーボ:明日は休め!って言うかもう、今日か…って、休め、必ず!
  鈴:でもお仕事が
デーボ:馬鹿。そんなんじゃ客に迷惑かけるだけだ。
  鈴:それは困りますね―
デーボ:いい、俺が電話しとくから、休め。
  鈴:ふにゃ……すみませぇん


だらりとデーボによりかかりながら、やっと寝室へ行く鈴。
デーボも、本当なら照れてしまうところだが、
そんな余裕もない。
ベッドに鈴を寝かせる。
熱で眠りが浅い様だ。
その晩は、鈴の額にタオルを当ててすごした。


そして…
暗転から明転へ。


デーボ:インフルエンザ?
  鈴:あい
デーボ:医者がそう言ったのか
  鈴:あい。
デーボ:辛いだろう?家に帰ろう


バイトを休んで、鈴を病院に連れてきていたデーボ。
車のエンジンを掛け、鈴を助手席に乗せる。
と……後ろから何かの気配!
とっさにスタンドを出して防御する。


キーンッ!


高い音がして、銀色のものが跳ねかえった。


???:この野郎ッスタンド使いか@
デーボ:なんだ貴様…今取り込み中だ、頼むから邪魔をするな!
???:うるせぇ。音羽さんに何するつもりだこの変態!
デーボ:ハァ?!?!??!


デーボの向かいで息巻いているのは、まだ若い男。
銀髪を逆立て、威勢のいい皮ジャンを羽織っている。
見ると、後ろの方にハーレーが置いてある。あれで来たらしい。


ポルナレフ:我が名は、J・P・ポルナレフっ!貴様に天誅を下すっ!
  デーボ:な、なんなんだ?!ちょっと待て…うわッ


ポルナレフの騎士のようなスタンドが放つ攻撃をエボニーの槍で受けとめる。


デーボ:馬鹿野郎!こんなことしてる暇ねェんだ


エボニーの槍で牽制しておいて、自分は車の方へ行く。
ポルナレフのスタンド…シルバーチャリオッツの切っ先が、エボニーをかすめる。


ポルナレフ:逃がすかっ!
  デーボ:痛ッ!いいかげんにしろ!鈴さんの知りあいだかなんだか知らんが、彼女は今病気なんだ!
ポルナレフ:へ?


攻撃の手が止む。
ポカンとしているポルナレフ。
エボニーがデーボのもとへもどる。


ポルナレフ:って……アンタ、誰
  デーボ:誰…って…名はデーボ…。
ポルナレフ:変態じゃないのか?
  デーボ:へ…変態ッ…って!失礼な!
    鈴:デーボ様は鈴の旦那様ですぅ


声を聞きつけたのか、鈴がゆっくりと助手席から降りてきた。
慌てて鈴を止めるデーボ。


  デーボ:馬鹿。無理をするな
ポルナレフ:だ、旦那様……?!
    鈴:あい。
  デーボ:鈴さん…そ、そんな公言するような関係じゃ…
    鈴:ちなみに結婚はまだですぅ。えへへへへへ
ポルナレフ:が……があああああ
  デーボ:…?な…なんだ…?!
ポルナレフ:ああああああああああああああ!


そう叫んだかと思うと、逆方向に向かって走り出すポルナレフ。
デーボと鈴が見送る中、ハーレーと一緒に叫びながら
どこかに行ってしまった。


  デーボ:…?なんなんだ…あいつは…
    鈴:新しいバイトさんですぅ
  デーボ:バイト?…ああ、例の…
    鈴:面白い人ですね―
  デーボ:おかげで怪我しちまったがな
    鈴:え…!どうしてそんなことを……
  デーボ:話は後だ…家に帰って休むのが先決だ。いいな?
    鈴:…あい…。


ポルナレフの事は気になったが、とにかく家に帰る事にした。
多分自分の思ったとおりだろう。
ポルナレフとか言ったあの男。
どう見ても鈴さんに惚れている。
そう思うと、やっぱり溜息が出た。


デーボ:俺に普通の生活はありえないのかァ…


鈴が。ん?といって聞き返してきたが、首を横に振って答える。
それ以上は鈴も聞いてこなかった。
多分ボーっとしているのだろう。
そのまま車を走らせて帰路につく。
家の近くまで来て、はじめて気がついた。


デーボ:あ、あの野郎…


バックミラーにハーレーがうつっている。


デーボ:ストーカーみたいな真似を〜ッ
  鈴:どうしたですかー
デーボ:さっきの男が…
  鈴:ポルナレフさんですか?
デーボ:つけてきてやがる……まあいい、無視だ、無視。
    とにかく鈴さん、アンタ、ベッドに入れ。


車を家の前で止め、鈴をおろす。
家に入り、ベッドに寝かせる。
特に、ポルナレフの動く気配はなかった。
鈴の身を案じているのか…
ちょっと、嫉妬のような気分に陥る。
ふと、鈴の小さな声。


  鈴:多分、なんか勘違いしてるんだと思うです…
デーボ:わかっている…大丈夫だ、やばい事にはしない。
  鈴:ポルナレフさん、イイ人だから……悪いことはしないと思うです…
デーボ:………
  鈴:怪我したところ、痛くないですか…?
デーボ:かすり傷だ。どうってことはねぇ
  鈴:ケンカ……とか…
デーボ:しない。誓う。
  鈴:よかった〜


そう言うと、鈴は気がすんだのか。目を閉じた。
さて。俺は外に出なくてはならない。
車をしまうんだ…と言う理由をつけて、ポルナレフの様子を探りに行こうとしている自分。
なんだか、鈴に悪い気がした。


続ご近所TOP/<デーボ&ポルナレフ編・第3話へ>