■餓狼伝説、KOFのストーリーとは全く関連ありません。設定も違うです。

winter snow

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■どっか行こうよ
マンションに帰ると、それを待っていたかのように雨が降り始めた。
気温で冷やされた冷たい雨。
部屋の中に、ユキを入れる。
躊躇なく。
そして、扉を閉める。確実に。キーをかけて。

ユキ「イイ部屋だねー」
山崎「……」
ユキ「おじさんやっぱり金もちなんだァ」
山崎「ユキっつったな」
ユキ「うん。」
山崎「なんのツモリだ」

出入り口に背を向けて、ユキに向かって言い放つ。
ユキが困ったように小首をかしげる。

ユキ「どうしたのおじさん、怖いよ?」
山崎「俺は山崎って名だと何故知っている?テメェ何モンだ」
ユキ「…おじさん…」

ユキが俯いた。
立ったまま動けない山崎。
ユキの反応を見る。待つ。
だが、ユキも動かない。

山崎「オイ…」
ユキ「聞いたの…」
山崎「誰にだ」
ユキ「お父さんに」
山崎「あ?」
ユキ「お父さんに言われたの、お父さんが死んだら山崎って人のせいだよって。」

そう言ってユキがにっこりと笑った。

ユキ「だからね、ユキは山崎さんを殺すの。」

バシン。
軽い音が鳴り響く。
ユキが仰向けに転がる。
小さな悲鳴が聞こえた。

山崎「くだらねぇモン持ち歩いてんじゃねぇか、ガキのクセによ」

到底届かないと思えた山崎とユキの距離。
ユキの手にちらりと見えた黒い光を、山崎の手は一瞬で掠め取っていた。

ユキ「アンタがお父さん殺したんだ!そうなんでしょ!?」
山崎「確かにムショには入ってたぜ。」
ユキ「人殺し!アンタのせいなんだ、アンタが…」
山崎「よく鳴くガキだ」

カチャリ。
掠め取ったのは小型の拳銃。
見たことのない模様。外国製のものらしかった。
それをユキに向けてやる。

山崎「そんなトコだろうと思ったぜ。死ぬか?テメェも追ってみるか」
ユキ「最低!死んじゃえ!死んじゃえッ!」

山崎に向かって近くにあるものを投げつける。
それを片手で振り払う。
ユキに向けた拳銃の引き金は引かなかった。
音がするから?殺すならもっと手段がある?
そんな理由じゃねぇ。

山崎「ハン…親がなんだってんだよ、たまたま近くにいた大人ってだけだろうが。
    お前がそれから何を学んだってんだ?アア?
    人殺しの手段か?身体を売る手段か。イイ親だなァ、エエ?」
ユキ「あんたに言われる筋合いなんかない!お前みたいなやつは死んじゃえ!」
山崎「どうやって殺すよ」
ユキ「……」
山崎「オラ、どうすんだよ」
ユキ「アタシを、殺さないの」
山崎「どうして」
ユキ「拳銃取ったじゃない、それであたし殺すんでしょ、撃てばいいじゃない」
山崎「暴発して手元で爆発するように改造した拳銃でか?」

ユキの動きが止まる。
じっと山崎を睨み付ける。
コイツは一筋縄じゃいかねぇらしい。
プロか?にしちゃ手口が幼稚だ。
そのままユキを放置して、ベッドに寝っ転がる。

ユキ「アンタ…山崎…アンタなんなんだよ」
山崎「山崎竜二。ただのオッサンだよ」
ユキ「そんなわけがない、アタシの手口を見破った。なんなんだアンタ」
山崎「テメェこそなんなんだ」
ユキ「アタシはユキだって…」
山崎「偽名だろ」
ユキ「うん」
山崎「素直だな」
ユキ「アンタじゃないね」
山崎「ああ?」
ユキ「お父さん殺したのアンタじゃないね」
山崎「どうしてそう思う」

ユキはそれ以降ずっと押し黙ったままだった。
コイツに危険はない。
そう感じて…不意に眠気が襲う。
スッと翳りそうになった意識の外に、声が聞こえた。

ユキ「んじゃおじさん!どっか行こうよ!!」

意識が別の意味でぶっ飛びそうになる。
なんなんだこのガキは!!!!!
ピルルルルルル。
ユキの何度も誘う声に重なって、電子音が鳴り響く。

ユキ「おじさん電話」
山崎「山崎だ」
ユキ「山崎電話」

呼び捨てかよ…
ぶつぶつ呟きながら、枕元にある携帯に手を伸ばす。

ぶっきらぼうな女の声が電話の向こうで響く。

山崎「誰だよ」
マリー『あたしの声忘れんなオオボケ野郎』

チ、と舌打ちをする。
シツコイから警察は嫌いだ。
ユキが興味津々と言った顔で、俺の携帯に耳を近づける。
それから遠ざかりながら、マリーの声を聞く。

山崎「なんの用だ、大人しくしてるだろうが」
マリー『あんたまだ死んでなかったのね』
山崎「ああ?なんで」
マリー『その女の子をアタシ達に引き渡しなさい。その子は殺し屋よ』

ユキを見ると、また困ったように俺を見て小首をかしげた。

ユキ「どっか、行こうよ…山崎。」


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