■餓狼伝説、KOFのストーリーとは全く関連ありません。設定も違うです。

winter snow

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■ある冬の日
夜の繁華街。
むすっとした顔で歩いているのは山崎竜二。
今現在一人。
保護監察中でなんとかかすかな自由の身…
大人しくしてろったって、身体が勝手にこう言う所に向いている。
この癖がなければ、もしかしたら免れたのかもしれない。

??「おじさん」

後ろから聞こえてくる声を無視して歩く。
後ろにいるのはガキとしか言い様のないガキ。
山崎の年齢とはどう見てもつりあわない。
つりあうとしたら援助交際と言ったところか…?
ダメよ山崎君そんなことしちゃ。
ただでさえ悪そうな名前なんだから。

??「おじさーーん」

甘い声。
くるりと振り返って、睨み付けてやる。
ニコニコと笑顔を返される。
その連続。

向き直って、やれやれと歩き出す。

??「おじさん遊ぼうよぅ」
山崎「他の男当たりな」
??「アタシ、ユキ!よろしく!」
山崎「他行けってんだろぉ!」
ユキ「おじさん声裏返ってるよぉ〜」

ユキは女子高生もどきの女の子だった。
ミニスカート、長い黒髪。
いまどきにしては黒髪と言う当たりが珍しい。

山崎「離せっ」

右腕に絡みつかれて、解こうとしてちょっとだけ突き放す。
殴っちゃってそのまま行っちゃえばイイのにねー。案外優しい山崎君。
って、ここで傷害事件なんか起こしたら、まだブタバコいきだもんね。
片腕にガキをぶら下げたまま、浮かない顔。

ユキ「おじさんお金持ってそうなんだもん」
山崎「んじゃ俺が金持ってないって言ったら離れるのか」
ユキ「離れるかも〜」
山崎「俺は無一文だ」
ユキ「ねぇねぇ、どっか行こうよー」

がっくし。
もう帰ろう、今日はついてねぇや。
妙なガキに絡まれるし。あのとき捕まってなかったらこんな事には…
いや、いやいや。
余計なことを考えるのはよそう…腹が立ってくる。

ユキ「おじさぁん」
山崎「うるせぇ」

こんな会話がずっと続く。
会話にならない会話。それでもユキは嬉しそうに山崎にくっついている。
どんなに威嚇しても、どんなに低い声を出そうとも、ユキは離れなかった。

あきれ果て、イヤになって繁華街を出る。
そのまま、暗い人気のない方へ。
な、なに?!ここから18禁の世界ですか?
カチャリ。
車のキーの音。
なんだ駐車場か。って、誰だ期待してたのは。

山崎「俺ァ帰る。テメェ離れろ」
ユキ「…」
山崎「離れろってんだよ。」
ユキ「連れてって」
山崎「ああ?」
ユキ「アタシ行くトコないんだ…」

そう言って、淋しそうに笑う。
濡れた様に黒い髪が、さらりと落ちる。
それを無視して左手でエンジンをかけ、
ポケットに突っ込んだままの右手から女を離そうとした。
するり。
簡単に離れて、ユキが俯く。

山崎「面倒な女は嫌いだ、邪魔するなら轢くぞ」
ユキ「連れてってよ…お願いします」
山崎「身体売ってホテルはいりゃ寝るトコも金もことかかねぇだろうが」

ふ、とユキの姿が消える。
諦めたのか、と車に乗りこむと…
パタム。

山崎「おい…」
ユキ「いい車だねー!おじさんお金持ってんじゃん!」
山崎「降りろ、さもないとマジで…」

助手席にユキの姿。
ス、素早い…つぅか強引だよユキちゃん。
ユキの目を見ると、まるで初恋のようにキラキラと。
山崎に今にも抱きつきそうな勢いのユキ。

山崎「どっかに売っちまうぞ」
ユキ「アタシを買ってよ、山崎さん」

山崎は無言で車を走らせ始めた。
ユキは始終外を見てはしゃいでいる。
そのまま家に向かう。
どっかの組に放り込んで、始末させてもよかった。
しかし、この女は。
この女は俺の名を呼んだ。
明かしていない俺の名を。
何物なのか。下手に捨てるわけにも行かない。
監察官に何か知られてまずいことなのかもしれない。

ユキが山崎を見て笑った。

ユキ「家に行くの?」
山崎「直接くればよかったんじゃねぇのか」
ユキ「なんで?アタシおじさんの家知らないよ」

そう言って笑う。
疑問を抱いたまま、走る。
ユキの正体を掴まなくてはならない…


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