■餓狼伝説、KOFのストーリーとは全く関連ありません。設定も違うです。
winter snow | ||
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■罵倒 | |
山崎「誰だよ」 山崎の低い声が聞こえた。 俺が居間の扉をノックした、それに対する返事だ。 すぐに返事をしたところを見ると、起きていたのか…? 俺には関係ないな。 そう、こいつが何故起きたままだったのか、考える必要はない。 ビリー「色気がなくて悪いな。俺だ。」 そう返事をすると、山崎が動くのが分かった。 山崎「なんの用だよ」 ビリー「入るぞ」 山崎「勝手にしな」 ハイハイ、勝手にするよ。 そもそもなんで自分の居間をノックしなきゃならないんだ。 いや、貸したのは俺か。 扉をあけると、山崎は立っていた。 俺に対するときで座っている事などほとんどない。 信用されていないのか、されているのかわかりゃしない。 面倒くさそうに俺を見下ろす。 アノな、面倒なのはこっちなんだぜ。 本当に面倒なんだ。なんで俺がお前に説教しなきゃならないんだ。 そもそもユキちゃんをどうすんだ。責任もてるのかこのやろう。 心の中ではそう罵倒しておいて、 もっとファジーな言い方に置き換えて口から吐き出す。 ビリー「山崎。聞きたいコトがある」 山崎「ユキのコトだろ?なんだ気に入ったかこのロリコンがぁ」 ぐ。 ちょっとだけ詰まったが、山崎に対する表情は変えない。 そんな遊びに付き合ってる余裕は俺の心にはない。 リリー…ユキちゃんがな。 ユキちゃんはな。 お前はな…。 山崎「言っとくが俺はユキについて何もしらねぇぞ、 勝手について来たんだからな。 どっかの誰かさんと違ってもててしょうがねぇや」 山崎の言葉は聞き流す。 俺の言葉が胸の内でうずを巻く。 俺はなんでこんな事。 そうだ、山崎が悪いんだ。 コイツが信用置けないヤツだから。 山崎「なんとか言ったらどうだ?用があると入って来たのはオメェだろが」 俺を睨み付ける目の中には、いつもある自分本位の生きかた。 これにユキちゃんが惑わされていい物なのか。 ユキちゃんはもっと自由であるべきじゃないのか? 縛っちゃいけない、期待されちゃいけない、 期待されて裏切る人間である自分を卑下せねばならない。 ゴメンな、リリー。 ビリー「あの子をどうするツモリなんだ?」 まかせて置けない、まだ俺のほうがなんとか出来る。 コイツには愛がない、俺には愛がある。 ユキちゃんがぼろくずになる前になんとか、引き剥がさないとならない。 俺の使命感だった。 俺は…なんでコイツをこんなに邪魔に思うんだろう。 山崎の返答は思った通り冷たかった。 山崎「言ったろ、勝手について来たんだ。俺はどうするつもりもネェよあんなガキ」 ビリー「やはりな、それが問題なんだお前の。 どうするツモリもないなら、自由にしてやれ」 山崎「ああ?何だテメェ。俺に説教食らわそうってのか?百万年早ぇ」 どうするツモリもない、要するに責任取るツモリがないってんだろう? 縛っちゃいけないんだ、そうなんだ。 俺のツマラナイ理由で人を傷つけたらいけない、人に頼ってはいけない。 ユキちゃんは傷つけてはいけない。 なら、山崎を傷つけるならイイのか? コイツは、傷なんか付かないさ。多分… 俺は傷ついてなんかいないさ、多分。 ビリー「お前といるってコトがどう言うことなのか分かっていてやっているのか」 離れろ。 山崎、お前はもう違う場所の人間なんだよ。 自覚してくれ。 自覚して、ユキちゃんを引きこむのはやめろ。 俺だってリリーを引きこまないためにこうやって苦しい思いをしているんだ。 お前だって苦しんで… 同じように苦しんで、俺の気持ちを分かってくれないか。 山崎「どう言う意味だ…」 ビリー「あの子は普通の子だろ?」 山崎「……本当にわからねぇんだアイツは。本名もしらねぇ。 お前が介入するコトじゃないだろう。 あんまりシツコイと、俺もキレるぜ」 違うんだ、ダメなんだお前じゃダメなんだ。 俺もお前も生きてる場所が違うんだよ、あの子とは。 守らなければならないものが出来ると人は弱くなると言う。 皆は守るものが出来ると人間は強くなると言うが…弱みが出来る。 ビリー「逃げているのはお前なのか、あの子なのか…。それが…知りたい」 山崎「両方さ」 ビリー「……出過ぎたコトを言っているとは思う…しかし…」 俯いた俺の目の前に、不意に山崎のあざ笑う顔が見えた。 覗きこまれて、笑われる。 山崎「安心しな。」 すべてを見透かしたように笑う。 やっぱりこいつは一人で生きるべきなんだ。 こいつは一人で生きているんだ。 そう、感じてしまった瞬間、俺は突き放されたような感覚に襲われた。 何故、だ? 困惑する俺に、山崎が一言、言った。 山崎「ユキは預けたからな。やっと羽根が伸ばせるぜ。」 言葉の意味を何度も考え直す。 それはどう言う意味だ? 捨てていくってのか?ユキちゃんを!? ビリー「あの子をほうって行くのか!?」 山崎「邪魔なものは切り捨てる。」 ビリー「それがお前のやリかたか!」 山崎「俺に期待してたのか?バーカ、甘いんだよ」 頭に血が上る。 ユキちゃんはこれで自由なはずだ。 俺は何故怒っている? なにかをコイツに期待してたのか。俺は、そんな甘ちゃんだったか? 気持ちを押さえきれずに、切れそうな神経に従うと 俺の腕が勝手に三節昆を振り上げた。 振り向きざまに受けとめられたその攻撃に気持ちがさらに高ぶる。 嫌いだ、お前なんか! 山崎「喧嘩売ろうってのかぁ。俺にか?」 山崎はまだ笑っている。 俺を、笑うな。 ビリー「お前は…最低だっ!」 罵倒する。何度も罵倒したい。 コイツを何度も否定したい。 ユキちゃん捨てるのか!ダメだ、なんでだ、 なんで俺はこんなわけのわからないことを…!? 山崎「なんとでも言いな、しかしな、 その言葉そのままお前にも返してやるぜ。情に熱いロリコン男が」 山崎が部屋を出て行く。 取り残される。何もかも。 俺の心も。 山崎が憎い。 ユキちゃんを守りたい俺を、許せるのは、お前だけなのに。 その権利を放棄して俺を捨てて行くのか。 誰もかれも一人ぼっちで… ユキちゃんも…リリーさえも一人ぼっちなのだろうか…。 |
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