■餓狼伝説、KOFのストーリーとは全く関連ありません。設定も違うです。

winter snow

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■殻
うかない気分で台所に入り、ただの水を呷る。
俺はこれからどうしたいんだろう。
そうふと考えて、行かなきゃいけない場所があったのを
やっと思い出した。

ビリー「そうだ、バイス…」

時計を見ると約束の時間をとうにすぎている。
待たせてもイイ相手とはいえ、いくらなんでも待たせすぎだ。
舌打ちをして、とにかく遅れたのも山崎のせいにするとして、身を翻した。
そして、目を疑う。

居間の扉が開いていた。
山崎はばたんとイイ音をさせて出ていったはずだ。
入って来たのは…誰だ?ユキちゃんだったら俺に声をかけてもいいはずだ。
誰だ?

身体を構えて、居間の中を見渡す。

???「アンタ誰だ」
ビリー「!?」
???誰だって聞いてんだ。答えな。」

ソファの後ろから声がする。
聞き覚えのある声…

ビリー「?ユ、ユキちゃん?一体なにを…」
???「アンタユキに会ったのか?」

そう言って顔を出したのはユキちゃん…嫌、ユキちゃんそっくりの女の子。
混乱する。
その手に構えられているのは小型の銃。
震えもせずにそれを構える姿は、どう見ても先ほどの彼女からは想像出来ない。

ビリー「……お、俺は…ビリー…あんたは…ユキちゃんじゃァないのか」
???「ココはどこなんだ?」
ビリー「俺の家さ。一体君は…。」
???「アキラって呼んでおきな。呼び名があれば名前なんてどうでもイイだろ」
ビリー「アキラ?」

アキラと言ったその女の子は本当にユキちゃんとそっくりだった。
だが、確かに眼の雰囲気がどことなく違う。
どことなく…
え?

ビリー「アンタ…アキラ?本当か?」
アキラ「うぜぇな。なんなんだよテメェ」
ビリー「なんで…」

なんで俺がユキちゃんに貸した服を着てるんだよ。
なんで…?
ちょっと待て俺。どうしたんだ俺。
なんだかわからないがコノ子はユキちゃんだろう?
本人は否定してる。しかもおっかない顔で。

ビリー「…あー…と…」
アキラ「男のクセにはっきりしねぇヤツだな。ユキってのに会ったんだろ?」
ビリー「ああ。会ったと言うか…」
アキラ「会ったんじゃねぇのかよ」
ビリー「あ、会いました」
アキラ「ユキの知り合いか?」
ビリー「ん、まぁ…というかかくまっていると言うか。」
アキラ「んじゃ味方じゃん?バァカ、はじめからそう言えっちゅーの!」

ユキ…じゃない、アキラちゃんはそう言うと、
やっと俺に向けていた銃を下ろした。
どうやら俺がユキちゃんの味方だと言うことで、安心したらしい。
そっと動く。
ユキちゃんに貸した部屋が気になる。

アキラ「おい」
ビリー「な、なに?」
アキラ「山崎って男しらねぇか?ユキの知り合いならその話聞いてんだろ」
ビリー「山崎?」

ユキちゃんもアキラちゃんも揃いも揃って山崎かよ。
アキラの下げた銃の引き金に指がかかったままなのに気づく。
この子はプロか?
味方でも信用しないってのか。
なんなんだ、俺の頭は混乱しっぱなしだぞ?
ユキちゃんがなにか寝惚けているのか?
いや待て俺。こんな寝惚け方って聞いたコトがないぞ。
いやいやいや、実は俺が知らないだけでこう言うことがあるのかも?
いやいやいやいやいやいや、ネェだろ…
ふと見ると、いい加減な時間だ。

ビリー「ああっ!!!」
アキラ「なんだテメェ!」
ビリー「時間!ヤベェもう俺行くから、とにかく今日は寝てて!」
アキラ「はぁ?」
ビリー「ちょっと人待たせてんだ、だから寝てて」
アキラ「何でアタシが寝るんだよ」
ビリー「ん?あ、そうか、君はユキちゃんじゃないんだっけ」
アキラ「どこ行くんだ」
ビリー「いや、人に会いに…」
アキラ「あたしの質問に答えてから行きなよ」

アキラちゃんが俺を見た。
ユキちゃんの顔で。怖い顔をして。
とにかく混乱している俺はとにかくココから離れたい。
ユキちゃんの部屋も見たい。
ユキちゃんがあそこに寝ていればオッケーなんだ。
寝てなかったら…

ビリー「山崎は、出ていったよ」
アキラ「なに!?」
ビリー「な、なに?」
アキラ「いたのか!?ココに!?」
ビリー「だってさっき君と一緒…いや、ユキちゃんと一緒にココに来て…」
アキラ「なんだってぇぇ!?ゲロ最悪、マジ話!?山崎逃がしたのか!」
ビリー「逃がした?」
アキラ「山崎どこ行ったぁ!?教えろ!教えないと殺す!」

もうなにがなんだか。
俺に銃口を向けて今にも引き金を引かんとするアキラちゃん。
ちょっと待ってどういうことよ、逃がしちゃいけなかった?

ビリー「ど、どこ行ったかは知らないよ、多分もう戻ってこない」
アキラ「信じられねー!最悪!やっと見つけたんに!
    近くにいるな?まだ近くにいるよな?オイ!」
ビリー「いや、車で出ていったから…わかんない」
アキラ「アアーッ!もう飛びてぇェ!」

俺には理解できない日本語を連発するアキラちゃんは、
散々俺に文句を言ったあとにこう言った。

アキラ「どこか行くんならつれてって」

しぶしぶ承知して家を出る玄関先で
ちらりと見た奥の部屋には
ユキちゃんの部屋には
誰もいないようだった。


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