そこで行われていたのは、乱舞とも言える戦いだった。
魔界の貴公子、デミトリ・マキシモフ。
対するは、勝気な少女、レイレイだった。
デミトリの咆哮と共に巨大な炎が巻き起こる…!
すべてが飲みこまれる恐怖、それに立ち向かう小さな投げ捨てられた命。

空の遠くで、泣き声が聞こえたような気がした。

レイレイ:あんたなんか、こうだっ!

そう叫んで引きずりそうなソデから、大きな鉄球を振り飛ばす。
笑いながら、それを避けるデミトリ。
勝ち目は、無い。

デミトリ:死にに来たか。小娘。
レイレイ:死ね!死んで!お願い!

闇雲に、暗器を放つ。
すべてが意味無く消え去るのを、その目で確かめてしまう恐怖。

デミトリ:バカめ。もう終わりにしようではないか、あまりにもばかばかしすぎる。
レイレイ:そんな…!まだまだ、なんだから!
デミトリ:その勇気に免じて、この私の虜にしてやろう。
レイレイ:ふざけるな…!………!?
デミトリ:私の、目を、見たな…
レイレイ:……
デミトリ:さぁ、こちらにおいで…


デミトリの目が怪しく光る。何物をも逃さない、帝王の瞳。
小さなキョンシ−、レイレイの身体は、ゆらりと、抵抗するでもなく、そちらに引きずられていく。
もう、どうにもならない。
すべてが、終わる。


???:そうはさせねぇゼ!この女は俺のもんだァッァア!
デミトリ:!!


叫び声の主を確かめるより先に、
その攻撃がデミトリの身体に降り注ぐ…!


デミトリ:グゥゥ…この…電撃…。
ザベル:死ねやァああ!
デミトリ:クックック…甘い、な…ザベルよ!
ザベル:なんだと!?!


電撃を食らったその身体のまま、光り輝きながら、デミトリはザベルを捕らえた。
デミトリの太い指が、喉に食い込む。


ザベル:グ…。ゲッ
デミトリ:お前が、餌食か。それも、面白い、かも、な?
ザベル:ぎぃぃ…こ、この…
デミトリ:貴様の存在を…否定してやろう…


ブシュ…
喉元から、血が吹き出る。
止めど無く、止まらず。
ようやく、デミトリがその傷口からその牙を抜き取ったときには、すべてが終わっていた。


しんとした、その空間。
誰も動かない。


デミトリ:何が…私を…こうさせるのか…お前が身を持って私に知らせるがいい…


高笑いしながら、頭を抱える。
絶えがたい頭痛、苦悩、苦しみ。
この恐怖はいつになったらやむのか。
そして闇にまぎれる。
何もなかったかのように、その地は落ちつく。
痛みと、静かな息だけがかすかに聞こえる。


レイレイ:ザベル…あんた、余計なコトするから…
ザベル:…
レイレイ:死んじゃったの?
ザベル:俺ァ…元から死んでらァ…
レイレイ:ザベル!
ザベル:あんたは、俺の女だ…
レイレイ:何言ってんだ!あたしは誰のものでもない!
ザベル:……体が…。空っぽになったみてぇだ…


ゆっくりと体を起こす。
その首に、ちいさな傷跡が二点。
血の、刻印。


ザベル:デミトリに…血をすわれたらしいな
レイレイ:大丈夫なのか?
ザベル:変な気分だ。俺は、今、なんなんだ?
レイレイ:え?
ザベル:俺は、ゾンビなのか、吸血鬼なのか
レイレイ:そ、そんな…
ザベル:あの野郎…ふざけやがって!ぶっ殺してやる!
     …痛…頭が…。くそ…これは、一体…


〜コンピューターのような声〜
  認識ID一致シマセン。不明物体トシテ、危険物扱イトシマス。
  ピピィィィィィィイイガァァァィアガピガァァァァ 
  認識IDと一致シマセン。認識サレマセン。
  存在ヲ、認メマセン。

NEXT