続・ご近所ジョジョ物語
ポルナレフ編・第7話「邪魔」

                       


車が揺れる。
J・ガイルから逃れて山の中腹まで降りてきた。じゃり道が続く。
鈴も、ポルナレフも黙ったままだ。
ちらりと見ると、唇をかみ締めている鈴の姿があった。

ポルナレフ:…心配ですか?
    鈴:…はい
ポルナレフ:でもこうするのが一番だったと俺も思います。
    鈴:…ハイ。
ポルナレフ:……
    鈴:鈴は…
ポルナレフ:はい?
    鈴:足手まといにしかなれないのでしょうか。
ポルナレフ:なに言ってるんですか!
   

工事現場のような広い場所に出て車を止める。
車も、心も軋む。


ポルナレフ:そんなコト考えちゃいけないッすよ!
    鈴:…鈴はスタンド使いさんじゃありません。鈴には力がありません。
ポルナレフ:それは…
    鈴:鈴がいつもデーボ様を邪魔してるんです、
      デーボ様が傷ついても、なんにもできません!
      恥ずかしいです、恥ずかしいです!
ポルナレフ:音羽さん…
    鈴:…ごめんなさい
ポルナレフ:……
    鈴:子どものころから思ってたんです。
      なんで鈴には誰かを護る力がないんだろうって。
      闘える力がないんだろうって。
ポルナレフ:俺も、思ってました。
    鈴:え?
ポルナレフ:ずっと思ってて、それでこうやって
      いつのまにかスタンド使いになっていて。
      スタンドが使えるようになった時は感じなかったんですが、最近…
    鈴:はい。
ポルナレフ:なんのための力なのか、分からなくなる時があります。
    鈴:ポルナレフさん…
ポルナレフ:自分を護るために出た力なのか。とすれば、
      それ相応に、これと同じ力を持っているのは
      人間全体じゃなければつじつまが会わないんです。
      闘うには、同等の力の敵が必要でしょ?
    鈴:敵…ですか。
ポルナレフ:敵になる可能性のある人間が増えてきました。
      そして俺はそれから自分を守る術を持っています。
      でもその敵が自分と同じようなスタンド使いとは限らないんですよ。
   

木々がざわめくのが、ウインドウ越しに聞こえた。
不安そうに、今来た道を振り返る鈴。


ポルナレフ:戻りたいですか、音羽さんは。
    鈴:でも邪魔できません…
ポルナレフ:わかっているんでしょ?音羽さん。戦うことってのは…
    鈴:生きるためであり、その手段としては戦うことだけではない
ポルナレフ:…
    鈴:デーボ様が言ってたことがありました。そう言う風に。
ポルナレフ:デーボが?
    鈴:はい。
ポルナレフ:生きるため…不思議な言葉だなぁ…。
    鈴:はい
ポルナレフ:んじゃ生きなきゃですよね!
    鈴:…ハイ。
ポルナレフ:んじゃ手段は色々ある、と。よっこいしょ。
    鈴:ポルナレフさん?
ポルナレフ:信じて待っていたいトコだけど
      俺も音羽さんに触発されちゃったッすよ


がこん。音がして、ギアがバックに入る。
車が旋回して、今来た道が目の前に広がる。


    鈴:だ、駄目です、デーボ様の邪魔に〜
ポルナレフ:なりません。さて、行くぞぉ!
    鈴:ええっ!だって、ちょっと、…ひゃん!
ポルナレフ:揺れますねー
    鈴:な、なんで?
ポルナレフ:デーボの野郎、自分で言ってることと
      やってることが食い違ってるんで、ぶん殴りに行くんですよ!
    鈴:デーボ様殴っちゃ駄目です!悪くないです!
ポルナレフ:だってあの野郎、生きるために闘ってねぇ!
    鈴:!
ポルナレフ:気づいてたんでしょ。音羽さんも。
    鈴:……いつもデーボ様は死にたがってます。いつも。
ポルナレフ:んじゃ、殴っちまいましょう。俺はあいつを許さねぇ
    鈴:ポルナレフさん…
ポルナレフ:音羽さんの気持ちを一番邪魔してるのはデーボだと思います!
    鈴:ポ、ポルナレフさぁん〜でででも、デーボ様悪く…
ポルナレフ:殴る前に、J・ガイル先に殴っときましょう!
    鈴:……はい!


ポルナレフがにっと笑うのに、釣られて鈴も笑う。
頑張れ頑張れ。沢山自分に言い聞かせた。
じゃり道をいくら登っても、霧は無かった。
期待と不安とが入り混じる。旅館前の敷地まであと少し。
自分の証明まであと少し。
      


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