続・ご近所ジョジョ物語
ホルホース編・第5話「追跡」

                       

 ホルホース:そう言うわけで当分帰れねぇから。

携帯越しにホルホースの声が響く。
ため息をつきながらうなずくミドラー。
分かってる、なんだか分かってる、あの人はまた、なにかに挑戦したがってる
以前もそうだったし、いつでも敵を欲しがってる。

  ミドラー:油断しないで、DIOはアンタより強いわ
 ホルホース:こっちにゃ相棒がいるさ、まぁ見てなって♪
  ミドラー:分かった、何かあったら連絡して。飛んで行くわ
 ホルホース:悪いな。んじゃまたあとで連絡すっから

携帯を切りながら、子供の泣き声に苦笑いが出る。
こんな非日常的な男と、日常的な男の狭間にいるアタシってなにかしらね…



外はもう夕闇が迫ってきていた。
ホルホースたちは病院を出ると、駅前で連絡を取り合う。
DIOの通勤手段と位置は大体つかめている。
途中で捕らえる。そして…


 ホルホース:待ってろよ…DIO
  ボインゴ:あの…。
 ホルホース:なんだい?
  ボインゴ:あの…いや…
 ホルホース:なんだってんだ?
  オインゴ:やめろボインゴ。
 ホルホース:なんだよ?
  ボインゴ:トト神で予知しておいた方が…勝てる確率が高くなりますです、はい。
 ホルホース:……
  オインゴ:ボインゴ。これはマジなんだ、男の勝負なんだよ
  ボインゴ:にいちゃん…


しょんぼりするボインゴを横目に、歩く人々を眺める。
駅前とは言え、たいした人出ではない。


ボインゴ:でも…


ぼそぼそとつぶやくボインゴ。
しきりにトト神を気にしている。


 ホルホース:お!
  オインゴ:ああ!
  ボインゴ:はい!?


3人が素っ頓狂な声をあげる。
3人が捕らえたのは、金髪をなびかせた男。
アジア人が往来する中、ひときわ目立つ。


 ホルホース:追うぞ
  オインゴ:え?
 ホルホース:人目が無いところじゃ無いと、警察ざたになる
  オインゴ:け、警察って
 ホルホース:人を殴るって行為は軽犯罪だ。
  オインゴ:…は、はい
 ホルホース:こんなしみったれたことはしたく無いんだぜ?でもな〜しょうがねえしな


あたりを確認して、そろそろとついて行く。
でもしかし図体のでかい男が二人、子供を連れて歩く姿。
通る人が振り向く。
DIOはそんなことを気にもせずに歩いて行く。
もしかしたら。気づいているのかもしれない…
気づかれているのかもしれない。
踊らされているのかもしれない。
ボインゴが心配そうにしている。
予知を見るのが怖いから、見ない、そう言うことだって…。あるさ…


DIOがふらりと歓楽街方面へ足を運ぶ。
ビルの裏手にすっと入って行ったのを見届けて、目配せをしあう。
そろそろだ。

 
   DIO:やはりホルホース、てめぇかよ。


ギクリとして振り向く!
DIOがニヤニヤしながら後ろにいる。
びくっとしたボインゴが、反対方向に奇声を上げて走り出す。


 ホルホース:グ…いつのまに…!
  オインゴ:こ、こいつだ!手前のおかげでおれは!
   DIO:俺のせいでおまえがどうかしたってのかよ。
  オインゴ:俺の足折っといて何言ってやがる!
   DIO:はは〜ん、そう言うことか
 ホルホース:なにがだよ
    

DIOがぐいっとホルホースを覗きこむようにして笑った。


   DIO:お礼参りのお手伝いかよ?探偵さん?
 ホルホース:仕事だよ、見つけたからには一発入れさせてもらうぜ!
   DIO:やってみ♪


そう言うと、するりと離れる。
掴みかかろうとした腕が簡単に避けられる。


  オインゴ:ホルホースさん!
 ホルホース:分かってらあ!


ギリっと痛む体の奥。
俺の何かがまた、傷つく。
そして俺は傷つくたびにこのエンペラーをかまえる。


 ホルホース:こっちだDIO!


そう言って放った弾丸。
空気を切り裂いてDIOの足元へと飛ぶ。
ソレを追うように、オインゴが腕を振り上げた!


    DIO:撹乱ってか?無駄無駄〜!!なんちゃって!


ズバァッ!
一瞬DIOの体が歪んだように見えた。
歪んだように…いや、歪んでいる?!
体の上半分が剥がれ落ち、やわらかな物体が弾丸とオインゴの腕を捕まえている。


ホルホース:お、オマエ!


DIOの仮面をはがして、その男はニヤニヤ笑っていた。


 
ホルホース:ラバーソ−ル!な、なんでおまえが…!
  オインゴ:う、腕が変な感じぃぃい
ラバーソール:
下手に動くと消化するぜ。俺のスタンドは”食う”スタンドだ
  ホルホース:食う?ま、待て、ソイツの腕食ったら殺すぞ!
ラバーソール:こっちだって理由いかんによっちゃ殺すさ。
 ホルホース:り、理由?
ラバーソール:なぜDIOを狙う?
 ホルホース:仕事さ。おまえが言ったように、お礼参りだよ!
ラバーソール:
……おれはJ・ガイルから、DIOを守ってくれと頼まれた。
 ホルホース:な、なに!?
ラバーソール:J・ガイルの理由はしらん、でも頼まれたとあっちゃほっとけねぇ
 ホルホース:こっちだって邪魔されちゃかなわねぇんだよ
ラバーソール:ソレはこっちの台詞だ。仕事だろうが生活がかかってようが、俺はオマエを阻止する
 

にやり、と、また笑う。
いつかDIOが言っていた、あいつはよく笑う男だと。
そう言って笑っていた。DIOもまた。
俺は、なんのためにこんなことをしているんだ。
なんのために、顔見知りに銃を向けているんだ。
なにがしたいんだ…。


ラバーソール:買収されてみるか?それとも俺を倒してDIOを殴るか、どっちにする?
 ホルホース:オマエ、いくらでやとわれたんだ
ラバーソール:無料奉仕さ、で、どうする?
 ホルホース:な…
ラバーソール:俺気が短いんだけどな…
 ホルホース:オマエは…
ラバーソール:やる気があんのか、ねぇのか、どっちなんだってんだよ!
 ホルホース:うるせェ!!!!


エンペラーをラバーソールの頭に向かって構える!


 ホルホース:なんで理由も無くDIOを守るんだ!?
ラバーソール:なんとなくだよ、ワリイか!
 ホルホース:人のために命なんか張れるもんか!
ラバーソール:はぁ?なに言ってんのオマエ?
 ホルホース:俺が、俺は、なんのためにこんな事をして
ラバーソール:オイ…?
 ホルホース:こんなことして!
ラバーソール:お、オイ、ちょっと…
 ホルホース:おまえの頭狙って引き鉄引こうとしてんだこの腕は!?
        なんで、なんで俺は殺そうとしてんだァァああッッ!??!


銃声一発。
避けようともしないラバーソールの右首筋を、銃弾がそれて行く。


ラバーソール:俺が怖いかよ
 ホルホース:うるせェっェエエエエ!!!!


頭を抱えて座り込む。見たくない、止めてくれ、
俺はなにをしているんだ、一体、なにをしようと…



<つづく>