続・ご近所ジョジョ物語
ホルホース編・第6話「壊せ…」

                       

ラバーソールの存在が怖い。確かに怖かった。
なんで怖いのかわからなかった、でもただ怖かった。
消えろ、消えろ。俺が壊れる前に、消えろ!


ラバーソール:なんで怖がってんだよオマエ?


壊される前に消せ、壊される前に…!


 ホルホース:消えろ…
ラバーソール:なに?
 ホルホース:邪魔だ、消えろ…消えろ。
ラバーソール:なに言ってんだテメェ…


俺は壊される前に壊さなくてはいけない
壊れたら戻れない
壊せ。俺の中でなにかがそう言っていた。


ラバーソール:オイオイ、落ちつけよ?


そう言ってラバーソールがまた笑う。
壊せ!息があがる、乱れる。壊してしまう。


 ホルホース:そうやってよ…ごまかして寂しいやつだよなァ
ラバーソール:なんだと?
 ホルホース:そうやって笑ってなきゃ自分をごまかせねぇんだろ?
ラバーソール:今度はやつあたりかよ。
 ホルホース:そうやって笑ってなきゃ、自分も守れやしねぇんだ
ラバーソール:……いい加減にしねぇと殺すぞ…。
 ホルホース:殺してみろよ!!どうせなにも出来やしねえ、
        どうせ笑ってごまかしてなんぼなんだろ?!
ラバーソール:…てめぇ…!
 ホルホース:所詮…!テメェは「特別な人間」じゃねぇんだ!
ラバーソール:……!


言い切った、壊してしまう、俺はまた、自分のために。
愕然とした気分で、俺は勝ち誇る。
ラバーソールの様子が一変したのもその時だった。


ラバーソール:……
  

オインゴがおびえたように俺に助けを求める眼差しを向ける。
俺だっておびえている。
俺だって怖い。
動けなかった。
ラバーソールが大きな叫び声を上げて俺をにらみつけた。
殺される。
本気でそう感じた。


俺の体を縦横無尽に殴りつけるなにか、
そして回りの壁までもが、鈍い音をたててへこむ。
オインゴが悲鳴を上げるのが聞こえた。
俺は声も立てられずにそれを受けていた。
死にたいデーボを笑った俺は、もしかして同じ気持ちだったのかもしれない
始めて気がついた。




……音が聞こえる。




  ????:……さん!
 ホルホース:……
  ????:…じょ…?……おきて!
 ホルホース:うッ…あ??
  

暗闇から覚めたようなそんな気分。
気を失っていた?
見ると、心配そうに、オインゴとボインゴが覗きこんでいた。
ラバーソールの姿はもうそこには無い。
散乱するコンクリート、鉄骨が剥き出しの壁。
壁の傷から血が流れているように思えたのは錯覚か。


  オインゴ:大丈夫ですか?!
  ボインゴ:しんじゃったかと思いました、よ、良かった、よかった!!
 ホルホース:あんなくれぇで俺が死ぬかよ〜?
       あ〜しかし思いッきり殴られちまったなァ


体が痛い。
オインゴも青アザを作っているようだった。


 ホルホース:おめェらこそ平気なのか?
  オインゴ:大丈夫です…。ホルホールさん、なんであんな…ことを…
 ホルホース:相手の精神を撹乱させて、隙を作ろうと思っただけさ。
       だが、キレられちまったな〜
       …しかしとりあえずヤバイ状況は脱したろ?
  オインゴ:はぁ…
 ホルホース:俺達の狙いはDIOなんだ、
       アイツにかまってる暇があったらDIO殴りたいんだろ?
  オインゴ:はぁ。


府に落ちない顔でオインゴがうなずく。


  オインゴ:本気で、あんなこと言ったんですか…
 ホルホース:あ? 
  オインゴ:所詮…特別な人間じゃ…
 ホルホース:口からでまかせに決まってるだろ?
       んなこと思っちゃいねぇよ馬鹿だなー
  オインゴ:あの人が、怖かったんですか…
 ホルホース:俺に怖いものなんかねぇさ。関係ねぇからな…


関係無いからな…
そして…俺はまた言葉を飲みこむ。
飲みこむたびに、俺は壊れていく。
本当の言葉が、声にならない。詰まってなにも言えない。
やっと出した言葉は、いいわけと作った台詞と
そしてごまかしの笑顔…
声が出ない。
この言葉は俺の言葉じゃない。俺の声じゃない。
この…胸に使える言葉を誰か
誰か引きずり出して…くれ………ください…


<決断編へ>