続・ご近所ジョジョ物語
ホルホース編・第4話「言葉」

                       

病室。その部屋は相部屋になっていたが、オインゴ以外誰もいなかった。
恐らくこの騒ぎだ、嫌がって病室を移ってしまったか…そう思って苦笑いをする。


  オインゴ:師匠って、探偵やってるんですか?
ホルホース:……師匠は…よしてくれ…
  オインゴ:先輩
ホルホース:ホルホースでいい。
  オインゴホルホースさん
ホルホース:OK。探偵だ。それがなんだ?
  

ベッドに置きあがっているオインゴが、さらに尊敬の眼差しをむける。
ボインゴはその傍らに引っ付いてしまっている。


ホルホース:俺はな、さっさとギャラ貰って事務所に帰りたいんだがな…
  ボインゴ:現金を届けさせましたです。はい。
ホルホース:へ?事務所にか?
  ボインゴ:まずかったでしょうか…
ホルホース:そうならそうと言え、俺はもう用は無いんだ、帰るぜ。
  オインゴ:まってください


立ちあがりかけたその背中に、オインゴが声をかけた。


 オインゴ:俺も、依頼したいことがあるんです…
ホルホース:……ケンカ相手をぶちのめすのを手伝ってくれと。
 オインゴ:……
ホルホース:ケンカも一人で出来ないのか?
 オインゴ:なんにも出来ないで、やられちまったのが悔しいんです!マジでなんにも出来なかったんです!
ホルホース:だからなんだよ?
 オインゴ:駄目でしょうか…俺は…この訳のわからないままで居たくない…
ホルホース:訳がわからない?
 オインゴ:知らないうちに、全然わからなかったんです、
      何もされてないのに突然足だけが折れてて…!
ホルホース:なんだ…そりゃ…


背中で聞いていたホルホースが、言葉に釣られて振り向く。
オインゴの表情は本当に悔しそうだった。
ボインゴも、すがりつくような目で見ている。
……ボインゴに弱いところを見せたくなかったんじゃなかったのか
その言葉を飲みこむ。


 オインゴ:あの金髪…一回だけで良いから、殴ってやりたいんです!
ホルホース:金髪?
 オインゴ:金髪に、赤い目です。あんなヤツそうそういません、ゼッタイ見つけます!
ホルホース:赤い目ェェェエエエ!???!
 オインゴ:知ってるんですか、あいつを!?
ホルホース:知ってるも何も…DIO…あいつにやられたのか?
 オインゴ:DIOってんですか?気にいらねぇ名前だぜ!
ホルホース:DIOを殴ってみたい、か。はっはっはっはは!良い度胸だな…クッククク
 オインゴ:そんなに…強いんですか?あいつ…
ホルホース:お前がよく知ってるだろう、強いか強くないか。
 オインゴ:……ホルホースさん
ホルホース:依頼、か?俺にDIOを倒してくれ、と?
 オインゴ:隙を作ってもらえるだけでも良いんです、殴ってやりたいっす!


大きくため息をつく。


ホルホース:又、裏切るような真似をするのか。俺は…
 

小さな呟きに、ボインゴが、首をかしげる。


 オインゴ:ホルホースさん…
 ボインゴ:にいちゃん…無理しないで…
 オインゴ:俺は、このままじゃいられねぇ、いたくねぇんだよ、ボインゴ。
ホルホース:このままでいたくない、か。


……俺だってそうだ


 オインゴ:力を貸してください!


……俺だって力が欲しい


 オインゴ:それを通じて、何かを掴みたいんです!
ホルホース:!


…俺だって…何かを、掴んで…


ホルホース:OKOK〜♪まかしときな。


自分で、探せないものは、どうしたら良いのか、教えてくれないか?


たくさんの言葉がいつも渦を巻いて滞っている。
消化できずに苦しい思いをするのは、いつも俺だったか?
俺以外の何かだったか?

オインゴが嬉しそうに万歳をする。それの真似をしてボインゴも万歳をしている。
ため息と、笑いが、同時に出た。

DIOへの道のりは、俺にとって、何なんだろうな。
…俺は、又。又、言葉を飲みこんだ。
そして、その依頼はすぐに実行に移された。


<つづく>