ご近所ジョジョ物語
第9話・収束
                       

  

病院からの帰り道。
ミドラーのスタンドをもう一度車に変えて、それを足にする。
どう言うわけか、後部座席にアレッシーがいる。
話の成り行き上、送っていくことになってしまった。


ホルホース:ミドラー、あんたのスタンドは便利だなぁ。
 ミドラー:私もこういう風に役に立つとは思わなかったわ。
ホルホース:それのおかげで助かったんだ、本当に感謝してるぜ。
 ミドラー:もう。バカァ。


いちゃいちゃしている運転席と助手席に、困った顔の後部座席が対照的だ。


ホルホース:おい、アレッシー。
アレッシー:は、はい?!
ホルホース:ふと思ったんだが、あんたなんでホストなんかやってるんだ?
アレッシー:えっと・・なんででしょう・・。
ホルホース:なんだ、別にやりたくてやってるわけじゃないのか。
アレッシー:はぁ・・。なんとなく、儲かるのかなって。
 ミドラー:駄目よ、なんとなくでホストなんかやっちゃ。
アレッシー:やっぱりそうですかねぇ・・
ホルホース:向き不向きがはっきりしてるからな。ああいう仕事は。
 ミドラー:やりたい事とか、ないの?


そう言われて、アレッシーが顔を赤らめた。
それに、目ざとく気付くホルホース。


ホルホース:あるんだな?なんだよ、教えろよ!
アレッシー:あんまり人に言えることじゃないですよ・・。
ホルホース:なんだぁよ。気になるじゃん。
アレッシー:うう・・
ホルホース:他人にそれを誇れる様にならなきゃ、やっていけないんじゃないか?
アレッシー:誇れますよ!これだけは誰にも譲りません!


その言葉を聞いて、ホルホースがにやっと笑う。
助手席から身を乗り出して、アレッシーの目を見る。


ホルホース:その心意気買った。あんた次第で俺は動くぜ?
アレッシー:俺次第で?
ホルホース:ちょっと料金は頂くがな。
アレッシー:・・・・聞いてくれますか。
ホルホース:ああ。
アレッシー:ベビーシッターをやりたいんです。


目を丸くするホルホース。
運転中にもかかわらず、後ろを振り向くミドラー。


アレッシー:ガラでもないと言うのは重々承知ですよ。
ホルホース:それ・・・イイんじゃないか?
アレッシー:へ?
ホルホース:俺と協賛しねぇ?
アレッシー:は?
ホルホース:イヤな、俺は探偵業やってるんだが、よく来るのが不倫とか浮気の調査なんだ。
      それで、俺は基本的にその本人と動くようにしているんだ。
      まぁ、これば俺のやり方の特徴なんだがな。
アレッシー:変ったやり方ではありますねぇ。
ホルホース:それでだ。やっぱりそういう調査をしたがるのは大半が女。
アレッシー:そうでしょうね。
ホルホース:だが子持ちが多い。
アレッシー:・・・それって・・。
ホルホース:子供がいると、仕事がしづらいんだ。な、わかった?
アレッシー:そう言った場合、俺がめんどうを見る・・と?
ホルホース:そう!
アレッシー:でも、そのめんどうをみる場所が無いから、働いて金かせいで・・。
ホルホース:んなものは、俺の事務所で十分だろ?


そう言ってウインクする。
驚きの表情から、歓喜の表情に変るアレッシー。


アレッシー:イイイイイイ、イイんですかぁ?!
ホルホース:俺は自分の為にならねえことは言わないからな、お互い様ならそれが一番だろ?


商談成立。握手を交わすホルホースとアレッシー。
それを笑いながら見ているミドラー。


ホルホース:まったく・・・だから人生ってのはおもしれぇよな!
アレッシー:俺もはじめてそう思えますよ!
 ミドラー:まったく世の中そう捨てたもんじゃないわねぇ。


車は足利市内、繁華街へと進む・・・。
もうあたりは人が出始めている。
時計を見ると、8時を回ったところだった。
ふと外を見ると。


 ミドラー:あ・・・あれ?
ホルホース:どうした?
 ミドラー:あれ、昨日の女の子じゃない?


言われた方向を見ると、そこには鈴がいた。
きょろきょろと、辺りを見まわしている。


 ミドラー:ちょっと様子が変ね・・止めるわよ。


車と横付けすると、鈴がこちらに気付いた。


    鈴:あ・・・・!
 ミドラー:昨日はどうも。
    鈴:ああああ、あの!
 ミドラー:ど、どうしたの、落ちついてよ・・
    鈴:デーボ様を見ませんでしたか?!
 ミドラー:え?デーボ・・どうかしたの・・?
    鈴:あんな怪我で・・・どこかにいなくなっちゃって・・ああ、どうしよう・・!!
 ミドラー:歩き回ってるっていうの?あいつ、あのまま?!
 

一緒になって慌ててしまう。
そのミドラーの後ろからホルホースが口を挟んだ。


ホルホース:行き先は多分、花京院の家だな。
    鈴:え、花京院の家?
ホルホース:言ってイイかどうかわからんが、非常事態らしいからな、仕方ねぇや。
 ミドラー:あの、花京院ブランドの?
ホルホース:そうだ。実は昨日、Jガイルの所で、殺しの仕事を請け負っているのを見た。
 ミドラー:え?
ホルホース:扉ごしだがな、チラッと見えたんだ。
    鈴:そこは、どこですか?!
ホルホース:ここから近いぜ。


簡単に場所を教える。
一生懸命に聞いている姿がいじらしい。


ホルホース:とまぁ、こんなところだ。
    鈴:有り難うございます!!
ホルホース:送って行ってやりたいが、多分俺達が顔を出さない方がイイだろうな。
      あと、もう一つ。
    鈴:はい!
ホルホース:あいつのことだから病院なんか行こうとしないだろ?
    鈴:はい・・。


ホルホース、ポケットからメモを出して、鈴に渡す。
簡単な地図が書いてある。


ホルホース:だったらここ連れてってやれよ。スタンド使いならここに行けば秘密厳守だ。
    鈴:スタンド使い?
ホルホース:俺もそうだし、こいつらもそうだ。そしてデーボもな。
    鈴:聞いたことがあります。自分の守護神みたいなものだと・・。
ホルホース:そんなところだ。
    鈴:いろいろと有り難うございました!!


慌てて走っていく姿を見送る。


 ミドラー:いつのまにあんな地図書いたのよ。
ホルホース:探偵業のクセでな、簡単な地図を描いてみただけさ。
 ミドラー:あんたも勘がいいわよねえ。
ホルホース:なんのことかな?
 

そこで、二人で顔を見合わせる。


ホルホース:おりょ?アレッシーのヤツは・・?
 ミドラー:そういえばさっきから姿が・・。


見やると、通りの反対側の電話ボックスにいる。
何かしきりに頭を掻いている。


ホルホース:?どうしたんだろう・・


近くに行くと、アレッシーがどうやら仕事仲間と話している様だ、
と言うことが分かった。


アレッシー:いや本当にすみません、なんだか知らないうちに病院にいて・・。
      え?いや、身体は大丈夫です。
      それより、昨日は・・・・はい無断で・・
      仕事が?え?なんでまた・・・俺、クビですか?
      違うって・・どう言う・・・あ、そうなんですか?!
ホルホース:おいおい、大丈夫か?
アレッシー:あ、はい、大丈夫です。え?いやこちらの話で・・。
      分かりました。そっち行きます。いや、でもとりあえず。じゃあ、あとで。


そう言って電話を切る。
困った様にまた頭を掻く。


ホルホース:どうかしたのか?
アレッシー:いや、仕事が臨時休業らしいんです。
 ミドラー:臨時休業?ホストクラブが?
ホルホース:聞いたことないな・・・潰れてんじゃなくて?
アレッシー:いや、ダービーが・・・えっと、責任者が、人探しをはじめたいらしいんで・・。
ホルホース:人探し?なら俺の専門分野だぜ?
アレッシー:あ!そういやぁ、そうですね!
 ミドラー:役に立てそうならアタシも連れてって。
ホルホース:俺も俺も。
アレッシー:なんだか遠足みたいな雰囲気ですね・・
ホルホース:まぁまぁ、気にするなよ。どうせ今仕事がねぇんだ、
      そのクライアント、紹介してくれねえかな?
アレッシー:ちょうどいまからそこに行こうとしてたんで・・。
      そうですね、イイかもしれないですねぇ!
      ただし、紹介はしますけど、確実に仕事が入るとは限りませんよ?
ホルホース:その辺は俺次第さ。とにかく、行こうぜ。
 ミドラー:車出すわよ。


何かが始まる、そんな予感。
収束されていく、空間。
一つになろうとする、その力がいま働き始めた。




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