ご近所ジョジョ物語
第6話・見えないものを見ようとする誤解それはすべて誤解

                       

目がさめたのは、4時だった。
寝過ぎてボーっとした頭で考える。
俺は、何をしているのだろう・・。


ラバーソール:起きたのか・・?
   DIO:・・・ああ・・お前か・・。
ラバーソール:今日は休んで良いってよ。ダービーから電話があったぜ。
   DIO:休み・・・?
ラバーソール:多分昨日のあんたの客の多さで、
       店の酒やらなんやらの用意が出来なかったんだろうなぁ。
   DIO:・・・・・
ラバーソール:だから店ごと休むって。はははは、気まぐれだよな〜!
   

すでに起きていたのか、ラバーは昨日と違う格好をしている。
ジーンズに、ぴったりとしたシャツ。
大きなバックルのベルトをつけている。


   DIO:・・・・出かけるのか?
ラバーソール:あ、わかった?俺もうそろそろ出るけど・・・また泊まってくか?


髪留めを口に咥えたまま、ラバーが言う。
長めの髪を、後ろに揃えてピンを入れる。
まるで、女のようだ。
 

   DIO:いや、すまなかったな・・そろそろ俺も出る。
ラバーソール:なんか急かしたみたいで悪いな・・。
   DIO:ラバーソール。
ラバーソール:ん?
   DIO:・・・なんでもない・・・。
ラバーソール:・・・今言おうとしたこと、言いたくなったらいつでも言いに来いや。
   DIO:・・ああ。いつになるかな・・。
ラバーソール:死ぬ前に言ってくれよな!気になって死ねねぇからよぉ?


そう言いながら笑う。
聞きたいのはそれなんだ。聞きたいのは。
言いたいことはわかっている。
そして、それに答えなんか無いと言うことも


そとはもう十分に暗い。
溶け込むように外の闇に交わる。
気持ちが良い。
ラバーソールに目で合図して、マンションから出る。
まっすぐ、家に向かった。
聞きたいことが、あいつにも、ある。
答えてくれるだろうか、答えられるだろうか。



所は変わって、DIOのアパート。
家にたどり着いたDIOが扉を明ける。
と・・・


ヴァニラアイス:DIO様〜〜〜〜〜〜!
    DIO:な、なんだ・・
ヴァニラアイス:ご無事だったんですね・・よかった・・
    DIO:ちょっと野暮用でな・・
ヴァニラアイス:そうですか・・・あの・・いいえ・・。


何か言いたそうにして、ヴァニラアイスが口をつぐむ。
DIOがちらりと一瞥をくれる。
それ以上何も言わない。


    DIO:何か、言いたいんじゃないのか?
ヴァニラアイス:え・・?いいえ、何も、無いです!
    DIO:・・・・・そうか


気が滅入る。いつもこうだった。
こいつは何も言わない。



ヴァニラアイス:・・私が・・何か・・・ご迷惑でも・・?
    DIO:・・・アイス。 
ヴァニラアイス:は・・はい!
    DIO:何故お前は・・・
ヴァニラアイス:はい・・・
    DIO:・・・・・・・何故、・・・・・・・俺に逆らわない?


しんとした空気が流れた。
ヴァニラアイスが、びっくりしたようにDIOを見ている。


    DIO:答えろ。
ヴァニラアイス:私は・・・・・DIO様に絶対服従しております。
    DIO:じゃあ、それは何故だ。
ヴァニラアイス:・・・え・・?
   

ヴァニラアイスの目が宙を泳ぐ。
それが、イライラする。


    DIO:貴様は、いつも・・・・・


ヴァニラアイスの顔が怖れにゆがむ。
DIOからの殺気を、感じ取ったためだ。
DIOが、うつむいたまま、部屋の奥に入る。
それを目で追えないヴァニラアイス。


    DIO:貴様は・・・いつもそうだ・・!


そう言うと、目の前にあったグラスを踏み潰す。
尖った切っ先が、足を切る。
すぐに、その傷も塞がってしまうのだろうが。


ヴァニラアイス:・・・DIO様・・申し訳ありません・・・っ・・
    DIO:あやまるなッ!


ヴァニラアイスが小さく悲鳴を上げる。
はがゆい。ヴァニラアイスが・・・?いや・・・・・自分が、はがゆい。
苦し紛れに、グラスの破片をもう一度踏み潰す。
痛みが、そこにあった。


ヴァニラアイス:・・・DIO様・・。
    DIO:・・・・
ヴァニラアイス:私は、ここに居てはいけませんでしょうか・・
    DIO:・・俺に・・・・寄りかからないでくれ・・。
ヴァニラアイス:・・え・・?
    DIO:つかれた・・


それだけ言うと、そこに座り込む。
足の傷はもう消えている。
血だけがそこに赤い水滴を散らしている。


ヴァニラアイス:・・DIO様・・話しかけても・・?
    DIO:・・・・なんだ・・
ヴァニラアイス:・・・私は・・むしろ・・寄りかかって頂けると・・光栄なんです。
    DIO:・・な・に?
ヴァニラアイス:信頼されて、頼りにされているものと思いこんでいました・・。
    DIO:・・・
ヴァニラアイス:それが・・・・逆になってしまっていたとは・・気がつきませんでした・・。
    DIO:お前は・・
ヴァニラアイス:はい
    DIO:お前の望みは・・なんだ?
ヴァニラアイス:DIO様の近くに存在し、信頼され、
        DIO様と共にこの途切れ無き時間を歩んでいくことでございます。
    DIO:・・・ク・・・クククク・・・。
ヴァニラアイス:DIO・・・・様・・?
    DIO:ハハハハハハハハハハハハハハハ!


上を向いて、目を閉じたまま、笑う。
情けないような、自己嫌悪と言うか、溜息が、そして、安心したような、複雑な気分だった。


    DIO:分かっていなかったのは、俺のほうだったというわけか・・・・・?
ヴァニラアイス:・・・・・?
    DIO:勝手に、自分だけしか居ないような気になっていたのは、俺だったというわけか!
ヴァニラアイス:DIO様?どういった・・・・・
    DIO:教えてやらん、お前にも誰にも・・・ナイショってヤツだ!ハアッハハハハ!


可笑しくてたまらないと言った風で笑う。
ヴァニラアイスが呆然としているのがまた可笑しい。


ヴァニラアイス:お・・教えてくださいよ〜DIO様・・。
    DIO:い・や・だ。
ヴァニラアイス:ええ〜!?そんなぁ!


もじもじと布団の端っこをいじっているヴァニラアイス。


ヴァニラアイス:あの。DIO様・・?
    DIO:なんだ
ヴァニラアイス:私はここに居て・・
    DIO:お前の好きにすれば良い。むしろ居てくれたほうが面白い。
ヴァニラアイス:あ、ありがたきお言葉!もったいないです!
    DIO:ははは・・相変らず変なやつだ・・。
        ヴァニラアイス、俺は、分かったような気がするぞ。
ヴァニラアイス:おめでとうございます!何がでしょう!
    DIO:言葉が逆だ。
ヴァニラアイス:何がでしょう!おめでとうございます!
    DIO:逆でも変だ。
ヴァニラアイス:なんですかぁ〜?!おっしゃってください!
    DIO:俺は多分、寂しがり屋だ。
ヴァニラアイス:!!!・・・DIO・・・・・様・・・・そんな・・・。


自嘲するDIO。
ヴァニラアイスに向かって、ゆっくりと言う。


    DIO:お前は期せずして俺と同じ時間を生きることになった。
        時間という枠外に存在すると言っても良い。
        事実、年を取らないと言うことは自然の摂理に反している。 
        自然に反すると言うことは、自然と統合できないと言うことだ。
ヴァニラアイス:はい・・。
    DIO:要するに、これから先、暇だぞ。
ヴァニラアイス:私が暇つぶしになります。
    DIO:・・・・・・・
ヴァニラアイス:DIO様?
    DIO:よろしくな
ヴァニラアイス:・・・え・・?DIO様・・?!
    DIO:ん?俺はなにか言ったか?
ヴァニラアイス:・・・いいえ・・・・いいえ。


こんなにゆったりとしたDIOを見るのは初めてだ、
ヴァニラアイスはそう思っていた。
馬鹿馬鹿しかった、時の集合体が、いま、ときほぐれていくような、そんな気がした。




 <集結編へ>