ご近所ジョジョ物語
第4話・笑う

                       

夜もふけた。3時になろうとしている。
   DIO:いつもこれくらいに終わるのか?
ラバーソール:ご不満かい?
   DIO:いや、助かる。
ラバーソール:この店は終わるのが早いんだ。
       まあ、金目当てでやってるんじゃないらしいからな。
       オーナーがそう決めたんだ、従うのがスジさ。

帰り道、同じ方向に歩きながら、ラバーソールが笑う。


   DIO:お前は・・・。
ラバーソール:ん??ぁんだよ?
   DIO:よく笑うな・・。
ラバーソール:悪いか?
   DIO:いや。おもしろい。
ラバーソール:なんだそりゃ?DIOアンタが笑わなさすぎるんじゃないのか?
   DIO:笑わないか・・?
ラバーソール:・・・・まぁ・・・俺にはそう見えるぜ。
   DIO:そうか・・。
ラバーソール:俺から見りゃお前のほうがおもしれぇよ。
       ・・・て・・・ところでお前歩いてきたのか?
   DIO:まぁ・・・そんなところだ。

実際のところは、太陽にあたらないようにするため、
ぎりぎりに家を出て、ザ・ワールドの力を使いながら時間短縮してきたのだが。


ラバーソール:へぇ。
   DIO:一つ質問がある。
ラバーソール:なんだ?
   DIO:何故俺に付きまとう?


ハァ?と言ってラバーソールがDIOを覗き込んだ。


   DIO:理由が知りたい。


無表情にそう言ってのける。
不思議なのは事実だ。
力を見せない相手、自分の殺気を見せていない相手に
付きまとわれるのは始めてだった。


ラバーソール:付きまとうってのは失礼じゃねぇか?
       まるで俺がアンタの追っかけみてえじゃねぇかよ。
   DIO:知りたい。


立ち止まり、ラバーソールを見る。
まっすぐにこちらを見ている瞳。
こんな目は、始めてだ。


ラバーソール:興味があるだけだ。
   DIO:興味?
ラバーソール:ちょっとな。


そう言って指で1mmくらいの隙間を作って見せる。


   DIO:随分とちょっとだな・・


その指を見て可笑しくなる。
笑おうとして、やめる。


ラバーソール:惜しいッ!もうちょっとで笑うとこだったろ?!
       
   
そう言って笑うラバーソール。
どうして・・・・こいつは・・。


   DIO:本当によく笑うヤツだ・・。
ラバーソール:お前はなんでわらわねェ?
   DIO:わからん・・。
ラバーソール:俺はおもしれえと思ったら笑うッ!
   DIO:原始的だな
ラバーソール:アァ?!テメエ、ケンカ売ってんのか?
   DIO:要するに分かりやすくて良い。


実際始めてのことだらけだ。自分の目を見て話すヤツ。
心地良い笑い声。力を見せない自分に興味を持ったヤツ。
そして、何も隠さない素っ裸の態度。
あらためて、不思議なヤツだと思った。


ラバーソール:お前は素直すぎるんだよなぁ
   DIO:?
ラバーソール:悪く言えば、自分勝手かな?
   DIO:・・・・そうか・・?
ラバーソール:イイもんが見つかると良いな?DIO。


そう言うと、天を仰ぐ。満天の星空。
冷たい空気に息が白く浮かぶ。
つられて、上を見る。広い、夜空。


   DIO:イイもん・・・か・・。
ラバーソール:近道しよーぜ、どうせこっちなんだろ?
   

そう言うと、低い手すりを越えて、人工芝に降りる。
DIOもそれに従う。
細い獣道のようなところを歩く。
不思議な気分だった。いつか・・こんな気分を味わったことが有ったような・・。
不思議に思うことばかりで、頭がいっぱいだった。
たまにはこんな風に不思議な気分になるのもいいか。
そう言えば・・・・俺は・・なんでこいつと一緒に歩いているのだろう・・。
ふと、疑問が頭をかすめる。
だがその疑問は続かなかった。
妙な気配を感じて、周りを見渡す。
それに気付いたラバーソールが、立ち止まる。


ラバーソール:なんだ?
   DIO:・・・・・この感じは・・。
ラバーソール:ん?・・・
  

木々の向こうから、話し声が聞こえる。
一つは女、もう一つは男の声・・。
しかも、この感じは・・・スタンド・・・。
女の声が悲痛に叫ぶ。


     女:しっかりしてください!どうしよう、どうしよう!!


その声を聞いて、ラバーソールが躊躇することなく木陰から出た。
月明かりと街灯の両方に照らし出されて、男と女がうずくまっている。


ラバーソール:おい
     女:きゃ・・!
ラバーソール:どうした・・・・・って・・・おい!すげえ血じゃねぇか?!
     女:止まらないんです、どうしよう!デーボ様!!
ラバーソール:意識はあるな?


そう言って、デーボのほほを叩く。
目を開けて、睨みつけるデーボ。


   デーボ:・・・余計な・・ことをするなよ・・。
ラバーソール:しねぇよ。俺が余計だと思うことはな。
   DIO:なんの騒ぎだ・・?


ゆっくりと近づく。スタンド使いなら、あるいは自分を狙っているかもしれない。
が、その心配は無用のようだった。
その相手は集中力をなくし、死に急いでいるスタンド使いだったから。


   DIO:死にたいか・・。
   デーボ:・・・な・・・にっ?
ラバーソール:会話はあとだ。ここから俺の家が近い。
   DIO:なんのつもり・・・
ラバーソール:ここにいるわけにも行かないだろう。そして病院に行くわけにも。
   デーボ:・・・・・
ラバーソール:DIO、手伝ってくれ。
   DIO:・・・・俺が・・・か?
ラバーソール:他に出来るやつがいない。
       それと、俺は意地悪なんでね。
       死にたそうな顔してる奴をそのまま楽にさせてやるほど優しくねぇ。
   

また、笑う。
ドキッとする。


   DIO:家はどこだ?
ラバーソール:この公園のすぐ裏だ。5分もかからねぇ。
       あのでっかいマンションの222号室だ。
       しかし・・・余りもたないかもな・・。
   DIO:・・・・・・ザ・・・・・・ワールドッ!


時が止まる。
ラバーソールも、デーボも、鈴も、すべてが止まる。
10秒なら止めていられる。
進化していく自分が心地良かった頃が懐かしい。
時を連続して止めつづける。
10秒も、連なれば長い時間となる。


デーボの血の時間も止まる。
これ以上出血しないうちにラバーソールの家に運ぶ。
それを選んだ自分が奇妙で気持ちが悪かった。
ザ・ワールドに、ラバーと女を運ばせる。


   DIO:まったく・・・気持ちが悪いッ!


そう言って止まった時の中で高らかに笑う。
が、不思議と腹が立たなかった。



<NEXT>