ご近所ジョジョ物語
集結編・第3幕・「B」

                       

J・ガイルの飲み屋はしんとしていた。
人が居ないわけではなかった。
静かににらみ合う二人の男が居た。
どちらも動かなかった、イヤ動けないと言った風だった。
そこへなんの前触れもなく扉が開いたのだから、
総毛だつのも仕方がなかったといえるだろう・・?


    デーボ:・・・・・・・!!!!!!っ!
  J・ガイル:ーーーーーーーー!ぱ!


入ってきたのはホルホース。
店内の状況に気付き、足を止める。


  ホルホース:ありゃりゃりゃりゃりゃ〜邪魔だった?
    デーボ:あ・・ッな、なんでお前はこう言うときにィ〜〜〜〜っ・・。
  J・ガイル:・・・早く扉を閉めてくださいよ。外は嫌いでね・・。
  ホルホース:おお、ワリィワリィ。
   ミドラー:なぁによぉ、殺気立っちゃって、仲悪いなら一緒に居なければいいのに。
  J・ガイル:いえいえ、別になんでもないですよ。
    デーボ:ただ殺し合おうとしていただけさ。
  

デーボの言葉にその場が一瞬凍りつく。
デーボから目を離さないまま、J・ガイルが言った。


  J・ガイル:・・・ホルホースの旦那はなんの用で?
  ホルホース:ちょっと情報を売ってもらおうかと思ってね・・。
  J・ガイル:後回しには・・
  ホルホース:させねえよ
  J・ガイル:・・・・・デーボの旦那・・どうしましょうね?
    デーボ:いつだって殺せる。好きにすればいい。


ミドラーがけげんそうな顔でホルホースを見る。
当たり前のような顔をしてその場に立っているホルホース。


  J・ガイル:どんな情報で?
 

J・ガイルが初めてホルホースのほうに向き直る。
デーボの目線もはずされている。
何ごともなかったのかのように、その場がほんの少しだけ、和らいだ。
懐から写真を取り出すホルホース。


   ホルホース:こいつの情報を知りたいんだ、アンタが知ってること全部。
 

つい、とその写真を覗き込み、眉を吊り上げるJ・ガイル。


   ホルホース:知ってるか?
   J・ガイル:しらないね
   ホルホース:知ってる顔だ。
   J・ガイル:知らないと言っているだろう。
   ホルホース:嘘ついてても分かるぜ。
   J・ガイル:・・・・・じゃあこうしましょうか・・


そう言うと、ウオッカの瓶をガン、とテーブルの上に置くJ・ガイル。
ロシア製の強力なウオッカだ。


   ホルホース:これが、どうかしたか。
   J・ガイル:これをストレートで飲む。飲み比べて俺に勝ったら教えてやる。
   ホルホース:ほぅ・・随分勝気じゃないか。
   J・ガイル:俺には肝臓が無いンですよ、だんな・・ケッケッケ・・。
   ホルホース:へぇ、それじゃ見せてもらおうか。
   J・ガイル:どうするんです?受けますか?それともおとなしく帰りますか?
     デーボ:俺が相手してやる。


遠くからの一声。
俺が相手をする。
声は低いが、はっきりとそう言ったのが聞こえた。


     デーボ:さっきの件も、これで勝負ってのはどうだ。・・手間が省けていいだろう?
   J・ガイル:へぇ・・・・、酒に人の命をかけるかい・・?
   ホルホース:おいおい、大丈夫なのか・・・負けたら困るのは・・。
     デーボ:負けるのはJ・ガイル一人だ。
   ホルホース:・・・・
     デーボ:ホルホース、お前酒強いのか?
   ホルホース:飲めるが・・J・ガイルにはとても・・。
   J・ガイル:ケッケケケッケケケ。面白い!デーボの旦那と飲み比べるのは始めてですねぇ〜!
     デーボ:能書きはいい・・。
   J・ガイル:今までに俺と飲み比べて死んだヤツが居るってのをご存知ですか?
     デーボ:少なくともそれは俺じゃない。
   J・ガイル:・・・・・イイじゃねぇか・・・アルコール付けにして殺してやるよぉ・・。
 

張り詰める空気。
酒で殺しあおうってのは始めてみた。
ホルホースは自分の息が何故かあがっているのに気がついた。
緊張していた、手のひらが汗で濡れていた。
何も命までかけるほどのことじゃァ無い、やめろ・・・。
だが、声が出なかった。


    デーボ:悪いな、ホルホース・・・ちょっと時間もらうぜ・・。
  ホルホース:あ・・ああ・・う・・。
   ミドラー:ちょ・・ちょっと待ってよ、何が起きてるの・・?
    デーボ:別に・・俺がJ・ガイルを酔い潰せれば、
        あんたらは情報を手にすることが出来る、それだけだ。
   ミドラー:・・・わかったわ・・死なない程度にやってよ・・?
    デーボ:死んだものはしゃべらないからな・・。分かった。


ウオッカがグラスにたっぷりと注がれる。
つんとしたアルコールのにおいが、すでに立ち昇っている。


  ホルホース:ミドラーがジャッジだ・・。
   ミドラー:・・始めてちょうだい。


するりとグラスの中の酒を飲み込んでしまうJ・ガイル。
それを見届けて、デーボがグラスを開ける。
J・ガイルが二つのグラスに、また、酒を注ぐ。


    デーボ:あんたが強いってのは聞いたことがある
  J・ガイル:あんたが強そうだってのはここで見ていたからな、薄々分かっていたよ。


そう言うと、2杯目を飲み干す。
二人とも、ペースが速い。
何も言えずに見守るミドラーとホルホース。
3杯、4杯と開けられていくグラス。


  ホルホース:す・・すげえ・・あんなペースで・・。
   

グラスが積み重なり、10杯を越えようとしていた。


    デーボ:氷・・・
  J・ガイル:へッへッへ〜そ・・そろそろギブアップですか〜い?
    デーボ:氷、入れてもいいか?生ぬるい。
  J・ガイル:・・・?!


唖然とする一同。
  

  ホルホース:デーボ・・あんた、ロシア人か・・?
    デーボ:俺はそう言う顔か?
  ホルホース:い・・いや・・・・。


次のグラスをまるで水を飲むように開ける。
酒を注ぐJ・ガイルの手が止まる。


    デーボ:どうした・・?俺が注ごうか・・・。
  J・ガイル:・・デーボの旦那ッ・・参考までに・・・・あんた酔ったことは・・・。
    デーボ:あるぞ・・・・・安心しろ。
  J・ガイル:しんじられねぇ〜・・・・う・・


目を白黒させるJ・ガイル。
気にも止めず、ちびちびと酒を舐めているデーボ。
判定あり・・か。


   ミドラー:J・ガイル、もう止めときなさいよ・・・あんたものすごく飲んでるわよ・・?!
  J・ガイル:こっちだって・・負けられねぇよぉ
  ホルホース:何故そこまでこだわるンだ、もういいじゃねぇか、
        デーボ顔色変ってねぇし、勝負にならねぇよ!
  J・ガイル:お袋に怒られるゥ〜
  ホルホース:ハァ?お袋?
  J・ガイル:俺は・・この裏の世界で成功しなければァ・・
  ホルホース:ア〜ア・・・ベロベロだよ、こいつ・。
    デーボ:お袋がいたとは・・・・・初耳だな・・。
   ミドラー:あんたなんで平気なのよ!
    デーボ:・・・・・
  ホルホース:J・ガイル、このままじゃ死体でお袋さんに会うことにもなりかねないぞ!
  J・ガイル:しなね〜よ〜


そう言って注がれている酒に手を伸ばそうとするJ・ガイル。
止めようととした、その矢先・・。
バタン!とものすごい音を立てて、J・ガイルが机に突っ伏した。
見ると、気絶しているらしい。


  ミドラー:これは、勝負あったってこと?
 ホルホース:酔いつぶれた方が負けってことは・・・・・。
   デーボ:俺の勝ちか・・・


そう言って立ちあがると同時に、後ろのソファーに倒れこむ。
そのまま動かない。


 ホルホース:お・・おい・・デーボ・・?
  ミドラー:まさか死んじゃったんじゃ・・だ、大丈夫?!
   デーボ:生きて・・る。ぞ。
 ホルホース:あんたもしかして、顔に出ないだけで・・
   デーボ:・・・・・
  ミドラー:ものすごく泥酔状態なんじゃない?
   デーボ:・・・目が回っただけ・・・だ。
 ホルホース:氷食うか?
   デーボ:大丈夫だ・・気分は悪いが・・・すごく気分がイイんだ・・
 ホルホース:まったく、どいつもこいつも・・。
  ミドラー:でも良かったわ、これで・・
 ホルホース:有り難うな・・デーボ・・。
   デーボ:情報は・・・・・・。
 ホルホース:え?
   デーボ:聞けば寝言で言うぜ・・・J・ガイルはよ・・。
 

なんでそんなこと知ってるんだ、
と聞こうかと思ったが止めておいた。
聞いたところで無駄だったろうが。
なにせ、デーボはすでに眠ってしまっていたから。


 ホルホース:ンじゃ、一服もって眠らせて聞き出しても同じだったってことか。
  ミドラー:知っててもやらないのが、コイツの良い所なんじゃないの?
 ホルホース:へぇ?じゃ俺は?
  ミドラー:知っててわざとそれをやるってのも、そいつの良い所なんじゃないの?
 ホルホース:へぇへぇ。ありがとうごぜえますだ。
  

その後、J・ガイルの禿げ頭に向かって、
一生懸命問答を繰り返す羽目になったホルホースとミドラー。
そしてその情報とは・・・・・。

<NEXT>