一人、森を歩く。
目立たない所にいなければ知らないうちに見つけられて攻撃を受ける。
身体も、精神も、ボロボロになりかけていた。
ザベル:このトリックはどうなってるんだ…どこに居ても見つけられちまう…
いや、見付けられちまうんじゃない、あるものすべてが俺を否定して…ッ否定…
俺は…ここにいてイイのか…
やっとのことで木に寄りかかる。
身体がこんなに重いものだとは思わなかった。
ザベル:調子…狂うぜ…
ざわざわと葉ズレの音が聞こえる。
俺しかいない空間。
他に何もいない世界。
それだったら俺は存在してもいいのだろうか。
俺しかいなければ…否定されることもない…。
すべてが真実
自分が真実…
すべてとはありとあらゆるものが真実
ザベル:くそぉぉぉぉ!そもそも真実ってのはなんなんだ!
そう叫んで後ろ手に木の幹を叩く。
何度も、何度も叩く。
いたい。
痛いよ、からだが、俺の腕が、俺の心が
イタイ
イタイよ
レイレイ:ハイジョシマス
ザベル:!
愕然とする。
いまここで俺を殺しにやってきたのは
あまりにも
レイレイ:存在ヲ、ミトメマセン!
ザベル:やめろ!レイレイ、お前まで俺を否定するのか?!
レイレイ:存在シナイモノガ、ココニアルコト自体、間違ッテイル。
ザベル:……!も…もう…俺はいなくなってしまいたい…
レイレイの操る幅広の剣が、俺の肩をえぐる。
腕が飛び、身体半分が吹っ飛んだ。
ザベル:これでも死なねぇ俺が怖いよ…
レイレイ:ハイジョ!
ザベル:アンタはさァ
レイレイ:I…D…
ザベル:自分が存在するって言いきれるのか?
レイレイ:…
ザベル:アンタが真実なら、この空気は真実なのか…?
レイレイ:……
ザベル:せめてそれくらい教えてくれよ…じゃないと…俺は…自分がわからない…
レイレイ:クウキ
ザベル:そうだ…これは空気…でも空気には心がない
レイレイ:…
ザベル:真実ってのは、誰が作り出したものなんだ?!
レイレイ:認識サレナケレバ
ザベル:認識ってのは、誰がするんだ?
レイレイ:シンジツ
ザベル:シンジツってのは…真実…ッてのは…
レイレイ:ニンシキ
ザベル:誰が…する?誰が…
レイレイ:IDヲテイジセヨ!
ザベル:真実って…まさか…俺…ハハハハハ…そうか…真実ってのは…誰が作っても
レイレイ:テイジセヨ!
ザベル:……なんかよ…俺、いまちょっとサァ…
レイレイ:シネ!!!
そう言って飛びあがる。
木の枝を片腕で掴むと、反動をつけてレイレイに飛びこむ!
ザベル:決めたゼェェェ!!!!俺は俺だ!それがIDだ!
レイレイ:!!!
ドガン!
ザベルが着地したその下に、レイレイが動けないでいた。
その頭を掴んでキスをする。
ザベル:もうイイ。殺せるモンならやってみな
レイレイ:死ね
ザベル:は?
レイレイ:何すんだァあっ!
ザベル:うへぇ?!レイレイ?
レイレイのでっかいパンチを食らって3メートルほど吹っ飛ぶ。
上半身を起こして、唖然としてレイレイを見る。
ザベル:レイレイなのか?
レイレイ:何言ってんだ、なんでアンタがここに…って言うかここ何処?
ザベル:レイレイなんだな?!
レイレイ:当たり前じゃない…ってアンタ!?なによその腕!?
ザベル:お前が切ったんじゃないか
レイレイ:あたしが?!冗談じゃない、アンタなんか斬ったら刃が腐るわよ
ザベル:一体、どうしたって言うんだ…
レイレイ:まさかあたしが…。フォボスみたいにあんたを殺そうとしたの?
ザベル:まぁまぁ、気にすんなよ…なんだかちょっと気分がいいんだ、難しいことはぬきにしようぜ
レイレイ:なによ、それ…腕…大丈夫なの?
ザベル:まだくっ付くだろ。ほら
ちぎれた腕と吹っ飛んだ身体を集めてくっ付けて見せる。
傷はあと方もなく消え、元通りになる。
レイレイ:聞いていい?
ザベル:なんだ
レイレイ:アンタは、何?
ザベル:俺か?俺はな…
にっと笑って空に向かって言う。
ザベル:ゾンビでも吸血鬼でもねぇ。俺はザベルザロックだ!
FIN