克己
強くなりたい、巧くなりたい
心はいつも渇望している
そして頭は知っている
そのために歩むべき苦難の道を
どうしてあの人はあんなに強いのだろう
どうしてあいつはあんなに巧いのだろう
頭では知りつつ心は哀しく悩む
やればいい
ただひたすら努力すればいい
地道なことの繰り返しを
飽く事なく続ければいい
ただそれだけ
答えは単純
単純かつ明白
でも僕にはそれができない
気がつけば20年
僕はいつも甘んじていた
徹することなく
没頭することなく
最後には敗退していた
「敗北はしても敗退はしない」
いつかこのコトバが好きだといっていたな
よく言えたものだ
自分の心の奥底を
抉る言葉と知りながら
自分に適さぬ言葉と知っていながら
よくも抜けぬけと言えたものだ
時を重ねるごとに
敗退を連ねて
朽ち果てていくのだろうか
縋るべきものはあるだろうか
神、仏、肉親、恋人、友達、先輩
縋るべきものがあるとしたら
それは自分、
敗退を重ねて形成されている自分の心
自分の心をもってして
今までに沈殿し滞積した
心の屍を
払拭するのみなのだろう
己に敗れる哀しみではなく
己にうち克つ喜びを
連ねて経験してみたい
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