とける

解けて溶けてなくなりそうで
歩いていた足が不意に地に付かなくなったその瞬間
自分が溶けていることに始めて気づきました。
嵌っていたはずの首輪も知らずに外れ
僕は自由の身になり
解けて地に染みこむはずでした。

溶けた身体は地に染まず
僕は大地からも疎外され
君にも溶けて行けず
その君はすでに燃えてなくなり
行き場を失った僕はねぐらを求めて月を見上げる。

どこに行けばイイですか?
どこに行けば僕は。

誰も教えてくれないから
自分で決めようと思い立ったあの日のことを忘れ
そうしてみんな地に立ちつづけるのですね
僕は思い立ったあの日のことが忘れられず
それを恥じながらそれが出来ない自分を恥じながら
溶けた身体を横たえていました。

月に溶けることが叶うならば
昨日の夜に溶けたかった
今日の僕はもうすでに足でったっていて
あの人の残した僕の足で立っていて
この足を逃げることに使う自分を恥じた。

敵なんかいなくて
敵なんかいなくて
敵なんか全然いなくて
がむしゃらに戦って
戦って戦って戦って戦ってるつもりで
背を向けて背を向けて逃げ出して敵に遭遇して

気がつけば後ろが敵だらけで
前には敵なんかいないってことに気づいた

歩け、溶けた僕の体よ、あの足を持って歩け。
あの人の足を持って歩け

あの人の僕が愛したあの人の
あの人の足を持って
もう見ることの出来ないあの人の
凝固した身体を忘れずに
凝固した足を引きずって
愛を引きずって歩け。歩け歩け。