ご近所ジョジョ物語
ある日の承太郎

今日は久しぶりに学校をふけて、街を流すことにした。
流すと言っても、ただ、ブラブラ歩くだけ。

と、後ろからスポーツカーの爆音。
承太郎の横を走り抜けていく。そしてその後からまた、もう一台の人が走り抜け・・


承太郎:・・・・・????


人が、車の後を追いかけて走っている、それもほぼ同じ速さで。
ぽかんと開いた口に風が吹き込む。
追いかけていく男がしきりに叫んでいる。


ホルホース:ミイイイイイドーーーーラーーーーー――――――ッ!
        忘れもん!わーすーれーも―ん!


そう叫びながら、ぴたと足を止め、銃を構える態勢を取る。
その手の中に、ふわりと浮かび上がる拳銃。


承太郎:スタンドか・・


銃の引き金を引くか、と思った瞬間、また追いかけ始める。


ホルホース:車売ったら怪我させちゃうじゃん!
        俺って馬鹿!馬鹿!って、待ってくでー――!!


えらい騒ぎで追いかけて行く。
道の向こうの端に消えてなくなるまで、承太郎はぽかんとしていた。
承太郎のときが止まったようになって、数秒後、やっと我に帰った承太郎。


承太郎:朝から妙なものを見ちまった・・・今日は厄日か・・。


そうつぶやいて、道を変える。
街中に続く一本道。
この通りにはちらほら店がある。
反対側の喫茶店に男女一組を見つけ、承太郎は立ち止まった。
立ち止まらざるをえなかった、と言おうか・・。


承太郎:・・・・・・・


見ると、この真冬にそでのないロングコート、からだ中傷だらけの男と、
清楚可憐と言う言葉が似合いそうな女性が合い向かいで座っている。
居るところが喫茶店でなければ、誘拐かと見間違うところだった。
と、きびすを返そうと思った承太郎の口がぽかんと開いた。


   鈴:デーボ様、あーん。
デーボ:・・・・・・・・・あ・・あの・・それはちょっと・・
   鈴:えー、一度やってみたかったんですぅ。ダメですか?
デーボ:俺、そう言うキャラじゃないから、やらせないで・・
   鈴:む〜デーボ様ぁ〜


なんとラブラブ行為を始めたではないか!
異様な光景に思わず制服がずり落ちそうになる。
そこでもう一つの異常に気付く。
男が、人形を持っている?!
人形フェチの、三つ編みやくざが、可愛い女の子に、あーんをさせられそうになっている光景!


承太郎:・・・・・や・・・・・・やれやれ・・だぜ・・・


やっとのことでそれだけ言うと、ギクシャクと身体をそらす。
目が離れないのは、もしかしたら、あーんが完了するかもしれないと言う期待からだった。
が、その期待は衝撃で打ち破られた。
何かにぶつかる。


   承太郎:お、わるいな


そう言ってぶつかった相手を見ると、
地面に転んでしまっていた。


ダービー兄:いやーん、ごめんなさい〜
   承太郎:・・・・・・・・・!


今度はオカマ?!
体の衝撃より精神の衝撃があった。
もちろん顔には出さなかったが。


ラバーソール:大丈夫?ダービー?前見てないからだぜ?
 ダービー兄:だってぇ〜あっちの喫茶店素敵じゃない〜!
ラバーソール:ん?あれか・・・あ、あいつ、あんなところでラブラブかよ〜!
 ダービー兄:なぁに、知り合い?
ラバーソール:ちょっとな〜。おい、どうだ、俺達もやるか?喫茶店でラブラブ〜。
 ダービー兄:やぁん、恥ずかしいわよぉ


ひげを生やしたオカマ言葉と、一回りはなれていそうなホスト風の男。
喫茶店に入っていなくても十分すぎるほどラブラブだった。
二人が承太郎に会釈をすると、イイ匂いがした・・


承太郎:濃い・・・朝だな・・・・・。


さすがに脱力感がある。
頭を振って気力を取り戻そうとしたそのとき、足元で子供の声がした。


承太郎:ん・・・・?


見ると、3歳くらいの子供が、おもちゃを拾っている。


アレッシー:あーあー。だめじゃないか、そんなトコ行っちゃ!すいませんねぇ〜
  承太郎:い・・いや


顔を上げて自分の目線の先にあるものを見てまたぽかんと口が開くのを感じる。
小さい子供に囲まれた、妙な男が立っている。
回りは子供、子供、子供・・・・・。
誘拐にしては数が多い、幼稚園にしては引率者らしくない、
子供をおんぶして、前で抱えて、右手にぶら下げて、それでいてまだ周りに子供が居る。


そのとき、承太郎は確信した。
この町って、変だ・・・・・・・・。
その日、承太郎が家に直帰したのは言うまでもなかった。