★プリン★
珍しくhydeが飲みにいきたいって言うから、美味い店につれてったのに。
始めのカクテル一杯で倒れられるとは思いもよらんかった…
それをしょうがない連れて帰って。
俺なんかまだ2杯しか飲んでないのに、ちぇー、だ。
しかし弱いってのは知ってたけど、こんなに弱かったっけ。
家に入って俺のベッドにhydeを横たえると、寝息が聞こえた。
まぁ調子悪くしたんやないから、エエか…。
占領されたベッドを見て頭をかく。
こりゃ、まさか同じベッドで寝るわけに行かんなぁ。
しゃあない、居間のソファで寝るか。
そう言う訳で俺は今このソファで目覚めたわけ。
カーテンの隙間から入ってくる太陽の光が顔に直でぶつかって、そんで目が覚めた。
hydeはまだ眠っているようだった。
ソファから飛び起きて、居間から続きになっている台所へ足を運ぶ。
んー…
冷蔵庫をあけて、物色する。
なんかあったと思うんやけどなー。
コレは、うーん、今こう言う気分じゃないしコレ…ちょっと甘いのは朝からイヤやな。
んじゃコレ。んーまぁ許容範囲内かな。
犬が並んだレモンのビール。あんまり和物のビールって飲まんけど、
コレはさっぱりしてるから結構行ける。
プシッという音に快感を覚えながら、瓶ごと口につける。
あー、これこれ、たまらんわ〜。やっぱ飲み足りんかったんやな、俺。
一人でうんうんと頷いて、瓶を持ったままソファに戻る。
すると、俺の部屋から顔を覗かせてげっそりしているhydeの姿が目に入った。
「おお?目覚めたん?」
「あー」
「大丈夫か」
「頭…痛ぇ」

ううっそ。あんなカクテル一杯で二日酔い?
小さなため息が勝手に口から漏れたのをhydeに気づかれないように酒で押しこんで、
その元に近づく。
俺を見上げるようにしてhydeが先に口を開いた。
「なあkenちゃん」
「なんや」
「眠い」
がく。膝の力が抜けるのを感じながら、コレはなんの冗談かと頭を巡らせる。
冗談ではないような顔してhydeがぼんやりと俺を見る。
心なしか、目が潤んでいるような…こんな目してたっけコイツ?
寝起きでかすれた声が俺の名前を何度か呼ぶ。
頭が痛いって言ってたなぁ。迎え酒ってのが俺の基本だけど、
さすがにコレは飲ませんほうが良い様な気がする。
何気なくhydeの額に手を当てる、そんな気がしたから。
……
「風邪ひいてんと違うか?」
「んー?」
「熱あるで…阿呆、そんなんやから一杯でダウンするんや。」
そうか、もしかしたら…この声って…
「喉、痛くないんか?」
「痛い…」
「阿呆!お前声大事にせなアカンやろが!」
爆声一発、担ぎ上げでベッドにほうりこむ。
されるがままでベッドにもぐりこむhydeに呆れながら、
風邪薬があったかな、なんて頭を巡らせて…
「プリン」
風邪薬ってどんなんやったっけ。そもそも薬ってどこに置いて…。
「あ?」
「プリン」
俺の聞き間違いでなければプリンだそうだ。
プリンって…クスリと違うやん。
「なに言って…」
「kenちゃん、プリン欲しい」

そんなわけで俺は今台所で砂糖を炒めてる。
なんで俺はこんなことしてんのよ。ちょっとお湯を足して、
ぐつぐつ言わせた砂糖がベッコウ色ににじんでくる。
久しぶりやなぁ。プリン作るの。
風邪薬は一向に見つからなかったから、まぁ打開作としてプリン。
プリンが風邪に効くんかどうか、そんなん知らんけどまぁこの状況やったらしょうがない。
hydeの小さな声が台所に聞こえてくる。
聞き取れなくて、鍋を持ったまま部屋に入ると、ボーっとした顔で一言。
「なー、焦げ臭いで」
「エエの、カラメル作ってんから焦げ臭いの」
「ガンになるで」
「ならん」
「なる」
「ならんて。」
hydeはそのままほっといて、カラメル準備完了して。
卵を溶いて、蒸し器を出して。
こんなんもってたなぁ、そう言えば、久しぶりに使うからちょっとホコリ臭い。
丁寧に洗って、匂いをかいでみる。
「ん、まぁよし」
そんで出来あがったのがこのプリン。器なかったからエライでかいどんぶりで作った。
見た目より、味主義、って、アカン?

「出来たで」
それを持って部屋に入ると、hydeが嬉しそうに起きあがった。
「なんや作ったん?スゴイなぁ、プリンて買うもんやと思ってた」
「ん?ゼラチンの方が好きやった?」
「????」
俺の言うことが理解できないようだったが、嬉しそうな顔は崩れてない。
そもそもプリンてのはな、卵でこうやって蒸して作るんが…
いや、一般的にはもうゼラチンで固めてまうほうが普通になるのか…
こんな事語ってもhydeのあたまがますます痛くなるだけだろうからやめた。

まだあったかいプリンを差し出すと、つまらなさそうに俺を見る。
「なんや?まだなにかあるんかいな」
もしかして、あーんして欲しいとかそう言う?
どうみてもhydeの目はそう言っていて。
ため息一発、スプーンですくって口に運んでやろうとする。
「kenちゃん…」
「なん?」
「口移しで食わして?」
「阿呆…プリンくらい自分で…」
「なぁ…」
なんでこう、頼みごとって断れないんだろうねぇなんてひとりごちながら
一旦プリンを自分の口に運ぶ。甘いプリンとちょっとにがみのあるカラメル。
うーん、美味い…我ながら。
って、食うたらアカンやん。
口にそれを入れたまま、hydeの方に向き直る。
ほれ、と、顎を突き出してやるとhydeは自分から寄ってきた。
ベッドの脇に座った俺の位置から言って、hydeの口に流し込む形になる。
口移して入って来たソレを幸せそうにむぐむぐと口の中で溶かしてるのを見ると
やっぱプリン作ってよかったなぁなんて思う。
催促されて、もう一口口に含む。
その途端。
俺の手から器がはずされて、ベッド脇のテーブルに置かれた。
その手がそのまま俺の顔に添えられて。
ベッドから起きあがったhydeが膝立ちになって上から俺の顔を見下ろして。
プリン入ってるから俺はなにも言えなくって、無言でhydeを見上げた。
「kenちゃんの目ってさ、優しいよな」
「んー?」
熱でボケたかな、と思いつつはよう食べんかい、なんて、心の中でせかす。
口の中でなくなってまうやないか。
あきらかに不満を示してる俺の口元にhydeがやっと顔を寄せた。
俺の口を器にして、hydeがプリンをすくう。
開かれた唇にかすかに当たる舌。
プリンの味。
中を掻き回されて、ちょっとだけ、ちょっとだけゾクっと来る。
多分そんな気はないはずや。だって風邪ひいてんだし、調子悪くて寝てたんだし、
そんな気があるはずないやん、俺の気のせいや…
深く入って来る舌に戸惑いながら、とにかく気を紛らわそうと思ってそう考える。
けど。
hydeの手は俺の首から…胸を撫でて。
口の中はhydeとプリンのまんま。
息苦しくなってきてもhydeはソレを止めない。
押しのけてみようとちょっともがいたら、頭を強く掴まれて深く舌を挿入されて。
その動きになんだか呆然となって。
キス…上手いんや…コイツ…
風邪のせいで熱く感じる息が俺の首元で荒く揺れる。
「kenちゃん、してもエエよな?」
「阿呆…病人は寝とき」
「イヤだって言ってもする。じゃなきゃ風邪なおらん」
「なんやソレ、って、ちょっとま、待ち…」

気がつかんうちにはだけられてたシャツの前から腹部を通って、
hydeのあったかい手がベルトの端からさし込まれる。
「ほ、本気か?!」
「マジ本気」
俺をみてにっと笑うと、そのままhydeは沈みこんだ。
驚くほど簡単に脱がされて、体中にキスを頂く。
「う…んッ」
下腹部に強い刺激。
間近に強いキスが跡を残して。hydeが俺をみてチロリと舌なめずりをした。
ゆっくりとベッドに倒される。大人しくそれに従う。
なんでかわからん、でもどうして良いかもわからん。
風邪をひいているのがまるで俺のように頭が熱い。
「kenちゃん?」
その声に閉じていた片目を開くと、不意に胸に強い痛みを…
「い、いって…hyde、噛むなッ」
音がしそうなほど強く噛まれた後、そっとそこを舌で撫でられる。
それを繰り返されて。
首筋にも、耳にも、もう一度胸にも、腹部から…其処まで。
「俺にも、チョウダイ?」
そう言うのにのろのろと従う。煽られたからにはもう止まらん。そう言う主義だから。
hydeがベッドの上に膝を立てたのを見て俺はひじをついて起きあがった。
腰を抱え込むようにして、そっと口に含む。
「…ん」
hydeがかすれた声を小さく発して俺の頭を抱え込んだ。
ちょっと無理やりな感じで俺の喉の奥まで押しこまれ、
むせ返りながらもそれをちゃんと受けとめる。
体が熱い。
もう止まれんのか、俺は。こうやっていつも流されて…
「kenちゃん…ッ!」
hydeの声と共に、口の中がさらに熱くなった。
抜き取られて口を押さえつけられて。
飲め、って、ことかい…
喉を鳴らす俺を満足そうに見下ろしてhydeが笑う。
「kenちゃん…もっと、かまってぇな」
「hyde?」
「いつも一人でどっか行って…みんな淋しいねんで」
「え?」
きょとんとする俺の足をおもむろに掴み上げて、hydeの身体は其処に沈みこんだ。
突然の衝撃。
「…っぐ、あッ…!」
想像以上に自分の声が苦しみを帯びていて、それに気づくまでに数秒かかった。
その間中もhydeは俺を攻めつづけて。
そんで、言うんや。
「kenちゃんの時間、もうちょっと俺達に分けて…そうしないと…」
そうしないと、そうしないと?
hydeの身体は異常に熱くて、俺の中に入って来たそれも相当熱くて。
動かれるたびに、腰から頭にかけて稲妻みたいに走る物体がある。
俺は快楽が大好きや…どんな快楽でも大好きや。
それがあるならフラフラとどこへでも逃げていく。
そんな自分が大好きで、大嫌いで…
「束縛と共有の意味の違いを…教えて」
hydeのその言葉で体の力が抜けた。
hydeの髪を引っつかんで、思いっきりキスした。
もっと深くこられるように、自分の足をhydeに絡めて、締めつける。
ゴメンな、って何度も繰り返した、頭の中で。
「俺かて…一緒にいたかったんや…ッ」
「じゃ、なんで!」
hydeの睨み付ける瞳と衝撃に、引きつった喉が上がる。
息をするのがこんなに大変だなんて…
自分の途切れた声をやっと繋ぎ合わせる。
途切れそうな意識を懸命に繋ぎ合わせて形にする。
「悪いや、ないかッ…!ん、俺、趣味、勝手や…し…ッ」
「……付き合う!」
「ひああああっ!」
hydeが一言発したその瞬間に俺の身体は丸めこまれた。
顔が間近で俺を見ている。
身体ん中全部がhydeになってまいそうなくらい深く差し込まれて。
顔をそらして声も出ない、目もあけられない。
奥のほうが、苦しい。
「つらい?」
「……苦し…ッ」
やっとそれだけ言ってそっと目を開く。
hydeの動きが緩やかになって、俺の様子が落ちつくのを待っているようだった。
優しいくせに不器用で、そんでスゴク冷たいやつ、それがhyde。
それが…

なんや…もしかして俺もそれかいな…

hydeが小さなキスをくれた。
無感動にその目を見上げる。
ジワリと押し寄せる快感に身が捩れて、hydeに抱きつきたくって手を伸ばす。
「欲しい?」
「…お前かてそうやろが…」
hydeが笑って頷いた。




上がりきった息がまとまるのを待ちながら、ベッドでぐったりと身体をのばす。
hydeなんかもうボーっとしたまま天井見上げて。
「風邪ひいてんのに無理するからや」
そう言って小突く。
「kenちゃん」
「ん?」
「プリン」
「食うんか?」
「一緒に食お」
「ん」

冷たくなってたプリンは心地よく喉の奥に滑りこむ。
誰かの為になんかしたって、そう言えば本当に。
久しぶりで…
やっぱこういうのも…俺…好きやなぁ…って…
昼飯…どうしよう。
病人には煮込みうどんかお粥か、いや、リゾットでもエエかなって。
そう考えてたら、hydeが嬉しそうに笑ってた。


風邪が直ったら、今度はみんなで飲みいこか。
みんなで。
そんでまたその嬉しそうな顔見せてや。
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