ちんちんどんどんちんどんどん。
へぇらっしゃいらっしゃい、いいのあるよ、御兄さんドウダイ買ってッちゃァ
ちんどんしゃんしゃん
ああそうだィねぇ、その辺りヒトツ貰おゥか

どぉん


どぉん



どぉぉぉぉん


少林山様の達磨祭り。
長いなぁがい階段をやっとこさ昇ると、そこに在るのは長蛇の列列列。
その周りで叫ぶわ叫ぶわ、男衆女衆出店の前でパンパンと柏手ヒトツ、二ツ、三ィッツ。

「なんだ、これは」
「へぇ、毎年ね、やってるらしいんで」
「こんな事を毎年か。まるでリオだな」

ジョージさんはさも物珍しそうに、目線の先はどうやら目の無い達磨。
特に寄ろうともせんとも、関わらんともせず、といった佇まい。

「さぁ、おおっとゲェジンサン、どうだい、お土産にヒトツ?お子さんお孫さんお母さんお父さん、近所の家族あわせて何人だい?」

商売上手な呼子にも目をくれず、ふらりと向けた視線の先。
奥の奥の奥のほう。
だぁれも居ねぇ、そんな暗闇を兄さンは凝視して。

「どう、しやした?」
「いやなんでもない」

やっぱり、落ちつかねぇンですかね。こういった風情と、喧騒ってのは、確かにこの人にゃァ似合わねぇ。

「そもそも、何のための祭りだ?」

綿飴リンゴ飴、たまにゃぁイイかなぁなどと品定め。

「さぁ、アタシにゃァ、とんと見当が。」
「知らずして来たる、か。日本人のそう云う所は私には理解できない部分だな」
「そうですかねぇ、どこの国でも同じヨゥなモンじゃぁ、ありやせんか?」

時にこのジョージさンと言う人は、的をズバット射抜いちまうようなことをいいまさぁね。
相手の急所を寸分たがわず射抜くことしか考えてねぇ。
あ、そう云やぁアタシもそうだ。

「ほい、こんなもんでも咥えてなせぇ、今日はとことんナァンも考えずに遊びやしょ」

と、ぽん、とその口の中へ、イチゴ飴ヒトツ。

「…」

キョトンとした顔で、口にイチゴ飴咥えてる外人ってのは、こう腹が捩れるほど面白いもんだってぇコトが
よぉくわかりやしたよ。

ああ、そうだ、おみくじとかってぇの。知ってやす?

もごもご、とイチゴ飴が動いて。

口からァ、外しなせぇよぉぅ

「…こういった食事に似た行為は、私には不向きだな」
「まぁ普段食べねぇモンですからね」
「食事というもの自体が私には抑抑(そもそも)必要が…」

ほい

もごもご。

アンタずっとそれ咥えてなせぇ。


アタシは、イチゴ飴咥えた外人引き連れて歩いて。
あっちの出店、こっちの出店。

アタシ一人ではしゃいでて、何だか、莫迦みてぇ。

アンタももうちょっと、ですねぇ

文句を言おうとして、ひょろっと長いその風体を仰ぎ見て。
あれ、いつの間にイチゴ飴全部食べたんですかぃ

「さっきだ。…まだ口の中が甘いぞ」
「甘いんですかぃ?」
「それはそうだろう?飴なのだから」

そうじゃなくて、
兄さンでも、甘いって感じたりするんですか?
アタシは豪く感動して。
へぇ、へぇ。成る程。このクチが。
甘いんですか。



ちぃと、こっちへ

「なんだ、アシハナ」
「いいから、いーからちょいと」

袖を引っ張り引っ張り、出店の裏。
境内に人が群がるのは、賽銭箱の前と相場が決まっていて。
それを避けて、境内の横手へ。

「…ここが、如何かしたのか?」
「んにゃ、違いまさァ、アタシも、ちょっとご相伴に、と思いやして」
「ゴショウバン?」

だぁって、
甘ェンでしょ、クチ

ひょい、と覆い被さる様に唇をヒト舐め。

あ。ホントだ。

「…アシハナ」
「はぃ?」
「…」

ぐい

って、アンタ兄さン、どうしたんで…

腰に手を回されて。

まるで此れじゃァ、社交ダンスの

情熱的なキッスをお見舞いされたようで、アタシぁ、
面食らって、
星が飛んでて

ジョージさンの様子が。

…はハァ、毒されやしたね。

明らかに、キスをしたままジョージさンの目は開いていて。
アタシの背後を見てる。

あ、クチン中、舌まで

「ん、っ」

歯列をなぞる舌に、首を引っ込めそうになり。
頭をつかまれて、さらに奥へ。
そんなに、掻きまわさねぇでくだせぇよ…

ゾク

背後を見てるジョージさンの目
殺意がそれに混じっていて
でもアタシは別になぁンにもしない
なんで?
そりゃぁ、こんな真っ黒なボディーガードが此処に一人。
接吻もしてくれる便利なボディーガードが此処に。

顔を上げたジョージさンの見てるのは、やっぱり背後で。

唇をチロ、と舐めて。アタシ以外の何かに宣する。





「此れは私の獲物だ」






あらまぁ
こりゃ、
情熱的なこって…

「これでやっと祭に集中できるな」
「ヘェ?」
見上げたら、ジョージさンが笑ってた。


「随分と…」
「狩るのも縊(くび)るのも私の自由だ」
「…情熱的過ぎやす是、そいつぁ」



此処はお山。
魔物と神の住む所。



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こめんと。
短い小説ですねーv
しかも意味分かりません。
いやね、自分の家の近くに少林山っていう山がありまして、
そこで毎年祭りがあるんですよ。
ダルマ市ってんですけどね。
そのお山がね、出るんですよ、いろいろ。
私が見た限りで、子供と、女性と、後すごく大きなでっかい塊がいました。
ジョージが見たのはドレだったんでしょうね?