呼称

 
ゴメンナサイ私は化物だそうです

化物
気持ち悪い
陰口
無視
いないのと同じ
目線

突き刺さる言葉

……そんなもの…そんな物はすべてお前達が私より劣っている証拠さ!


無駄だと言われるくらいならお前達を無駄にしてやろう
そうすればなんとか自分を繋ぎとめられる
人間には理由が無い
私には理由がある
確固たる他人に決められた存在理由がある
理由があれば存在するコトは誇れると信じていた
生きる理由があるなら存在する理由があるならば
ココにいることを誇れる、とそう思っていたのに何故

なんだアイツ気色悪い

人間かよ?いや、化物だな

機械みてぇ

知っているよ聞こえているよだけど聞こえないよ
それを聞いてなお私は笑うことを覚えた
なんにも感じないよ
苦しい
寂しい
ココはドコ?
何故そんな目で見るの
笑ってよ
何故誰も笑わないの
私はもうただの塊なの
いいえ。なぁんにも感じないよ。しろがね−Oだからぁ

クルクル回る鉄の塊
椅子に腰掛けてテーブルの上にいくつも置いたガラス玉
ソレに銀のメッキを施してさぁどうだ素晴らしいだろうなどと
あはは
クルクル回る
銀の玉
ただ回るだけ
ソレに意味なんて無いただ回るだけ
ただいるだけ
ただそれだけ
ただそれだけ

何度殴っても転がるだけ
転がるだけ、そう死体のように
見下ろす物に恐怖を覚え空をみられなくなり
私はもう前を見るだけ
ガラス玉の方が幾分生気を感じるだろ
そう私は既に塊と化し
君の目線に凍りつく

化物になる理由は消える為
化物は要らないだろう?
要らないから化物になるだけ
だからそう化物とお呼びなさい
もっと呼んでおとしめて
希望など持たせる真似はしないで
しないでと言っているのに何故私を見る?

「どうしやした?」

私を覗きこむ対の瞳
漆黒の瞳
それに恐怖しただ笑顔を作る化物らしい笑顔を作るさぁ気味悪がっておくれとばかりに
ただそれを見て普遍の顔で君が言う

「タイクツなのはアンタでしょ」

退屈?
私が?
化物が退屈など感じる物か
そう君は感じているよね私を化物だと
甘んじていよう
甘んじていたいから私を化物と呼んでくれ
楽しいと思う気持ちがここにある必要は無い
だからそんな面白がらないで
伝染する病原体のような君が私を冒す
君が私を見
私は君を見ない

私の持っていたガラス玉のメッキを見て

綺麗ですねェ、と一言発して

突き刺さる言葉
何も感じないよ
何も
何も感じていないよ
歯を食いしばってなんかいないよ
震えてなどいないよ
さぁ今だお互いを物として扱おう

 ああわかりやした

 なにが

 退屈そうなんじゃなくて、退屈その物なんですねェ

 …なにが

 何が、じゃなくて誰が、でしょう?

 誰が

 アンタ

 ……

 と、アタシ

メッキのガラス玉
君が開いた手のひらの中にも私と同じガラス玉
メッキを施したガラス玉
ひどくつらくなったから
ソレを奪い取って自分のガラス玉と一緒に握りこんだ
一瞬の寂しそうな顔と
ソレを求める君の哀願に
怖くなって逃げ出ししかし立ち止まり
振りかえると寂しそうにポツンと君が立ちすくむ
君に向かってガラス玉を投げる
私のガラス玉を
それを受け取った君がじっとソレを見て首を振る
これはアタシのじゃぁありません
返さない私を見て君は目を細め睨みつけ
そうして私のメッキを爪でガリガリと剥がしにかかる
ボロボロに剥がされたメッキに
ふいに身体中が熱くなり自分を見ると血塗れで
吹き出す血に刻まれる傷にただソレを見つめ
君を見
私を見て
ひどく悲しくて
ひどく痛んで
君が泣いた
泣かない私を見て君が泣いた
痛みに悲鳴を上げ
引き剥がされることをひどく拒絶する
血塗れのガラス玉が転がり
君のガラス玉が私の血に染まる
ソレをつかんで君は私を見下ろし
ボロボロのメッキを私の首に埋め込んだ
ひどく痛む首筋に気が遠くなり
そんな私を見て君が泣きそして笑う

血だまりに中に君のガラス玉が落ち
変に澄んだ音をたてた

痛いよぉ、と子供の泣き声


子供の手を引いて歩く私
ついて来る君に羨望を感じ
駄々をこねる君に
ひどく羨望を感じ
先に行きたがる君に私は立ち止まり笑う
私の手を引いて一生懸命引いて動かそうとする子供が滑って転び
泣きながら私の手をもう1度引いた


君が自分のガラス玉に爪を立て
メッキを剥がそうとし
そして震えてそれを止めた
もう1度握って
私を待つからそこに行こう
ガラス玉の中に潜む化物
いっそのこと曝け出して
それを隠すのは手のひらだけでイイ
自分の手のひらだけでイイ


クルクルと回る綺麗なガラス玉
痛くて泣いていた君が
痛くて笑ったりしないように
クルクルと回る綺麗なガラス玉


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