久しぶりに先輩と会う。
大学のとき以来だから、もうかなり年月が流れた。
というのに、突然の呼び出し。
名前は小此木、小此木…えっと、下の名前なんだっけな。
まあ、いいか、小此木先輩。そう呼んでたしな。
…あの頃は、よくしごかれたな。
誰よりも強くて、かっこよくて、俺だって尊敬してた。
そんな先輩からの呼び出し。
断るわけには行かなかったんだが…

駅前の東側のビルの前で待っていてくれ

と、そういわれたから、おとなしく時間より早く来て待ってるんだが。
遅いな…
ふ、とビルを見上げると、大きな会社のようで。
ナントカ不動産、土地販売系の会社らしい。
ビル風にあおられて、髪がばさついて視界をさえぎるのを手で押さえ、
視界をなんとか確保した瞬間。
「先輩!」
「おう、隼人」
懐かしい先輩の顔。
すっげぇなつかしい!あんまり変わって無いような感じがするけど、
なんか違和感。
でも、やっぱ体育着姿の先輩しか見たことなかったしな、ほとんど。
おそらく、スーツ姿なのが、違和感を感じさせるんだろうな。
「俺は今、この会社に勤めているんだ」
「ええええ?!」
でっかいビル。
コレ、先輩が勤めてる…?!
「って、先輩、サラリーマンに…?」
「…まあ、親が社長なんでな、しかたなかったのさ」
「はぁ、そりゃしょうがねぇですね…」

ちょっと、幻滅、しちまったか?
いやいや、どんな場所であれ、自分を輝かせられればソレが一番だ。
現に、先輩は、いい顔してる。
「で、なんですか、用ってのは」
「ああ…」
「?」
口ごもって、俺を下から上まで舐めるように見て。
学校帰りだから、ジャージのまんま来ちまったんだけど、まずかったのかな…?
「非常に言いずらいんだが…頼みたいことがあってなぁ」
「なんすか、言ってくださいよ、お役に立てるなら、俺ぁなんでもしますよ!」


ソレが、まずかった。


先輩の車に乗せられて、連れて行かれて通されたのは、料亭の和室。
俺は先輩に小声で尋ねた。
「な、なんなんですか、俺こういうの苦手なの知ってるでしょう?」
「ん、まあ…接待なんだ。」
「接待?」
和服の女性に先導されながら、奥のほうの座敷へと案内される。
「どうしてもウチで買い取りたい土地があってね…そこに今、風俗店が入ってる」
「風俗…」
やな、予感。
「この契約、完全にモノに出来なければ、うちの会社は危ないんだ」
え?
そんな深刻な事態になってるようなビルには見えなかったがなぁ…
でっかかったし。
「不況のあおりさ。土地は今暴落している。」
「…」
「そこでだ。隼人に遊女役を頼みたい」
「はぁあああ?!」

和服の女性が驚いて振り向き、先輩が俺の口を押さえ。たしなめて。
「い、一回だけでいいんだ、こっちで好みの男を用意するって、それでケリがつくんだ、頼むよ隼人」
「だ、だって俺は、教師ですよ!」
「俺の頼みでも駄目なのか」
「…駄目です」
「じゃあ、うちの会社はもう終わりだ」
「…」

殺し文句の、うまい人だったよ、昔から。







和室に通されて、顔を上げると。
ちょっと厳つい感じの、ひげを生やしたいかにもウラ商売をしてます、って感じの男。
「…オトコ?」
「…黙っててすまない」
「…」



男は、中沢と名乗った。
俺が気に入ったらしく(マニアックなオヤジだ)、話そっちのけで、俺に酒を勧めてくる。
コレじゃ、どっちが接待されてるのかわからねぇよ…
「名前は?」
「あ、熱血隼人、と言います」
「隼人くんねぇ。いいよ、面白いのを用意してくれた。答えは味見の後だ、いいな」
中沢が先輩に目配せする。
「はい、では…頼むぞ、隼人」
「え?ちょ、ちょっと…」
俺が言葉をかける隙もなく、先輩は部屋から出て行っちまって。
中沢は俺に奥の座敷を指し示す。
「…そんな…」
「言うことを聞くように言われてるんだろう?」
「…」









一度きりだぞ。
先輩、コレは、でっかすぎる貸しですよ…。
「さぁて、どう料理してあげようかね…」
「…っ…」
どう、料理、って…
どうしよう、
まだ、俺、心の準備も何も、できちゃいねぇ。
戸惑う俺を床に誘導して。
「両手を上げて上で組むんだ」
「…」
「返事は?」
「…はい」

言われるまま、に、するしかない。

動かない俺の前をはだけ、シャツをめくり上げて。
「いい、身体だな」
「…」
「礼を言え」
ふい、とそっぽをむいて。
そんなこと、言えるか。
…でも、言わなきゃ、先輩が、まずいのか…?
「フフ、気丈だな、リクエストどおりだ、たまらねぇ」
下を一枚脱がされて。
ボクサーパンツを履いていた俺の腰、布の上からなぞり始める。
「…っ」
中沢の軽いが、荒い息が耳に届く。
中心をなぞられて、思わず
「んッ…!」
「ここか?」
「ッは、…」
「手を緩めるな!」
緩みかけていた手、頭上にあった枕と一緒に握りなおした。
暗い部屋。
自分の息が荒くなってくるのが、耳について。
イヤだ、こんなこと。
でも。
くそ…
脱がされて、さらけ出された身体、中沢の指が這う。
薄目を開けた俺の目に、そのポケットから小さいものが取り出されるのが映って。
「な、なん…」
「俺は、せっかちなんだ。コレを使えばすぐにでもお前に突っ込んでやれるぜ」
「!?」
ヌルリ。
と、俺の後ろに、丸いものが滑り込んできて…
「っ!?」
カチ、という音と共に。
「や、ぅっ!?」
さっき、入れたモン、中で、振動して…
すごい、熱くて、
「う、あっ…」
「死ぬほどイイだろ?おっと、手はそのままだぜ」
中沢の手元のタバコに、ち、と火が点るのが見えた。




「あ、あっ…も、もぉ、っ」
身体をよじっても、頭を振っても、体中に沸きあがる快感から、逃れられない。
咥えタバコのまま俺を見ながら、自分のモノに中沢が手を添えて、扱きだす。
「まぁだ、なんもしてねぇぞ?んん?」
「っく…」
歯を食いしばって、目を閉じて。
駄目だ、
駄目…
中が…
「中、が、熱い…ッ」
乱れた俺の身体を、満足げに見下ろして。
腰に手をかけて、横向きにさせる。
「体育教師だってなぁ?」
「…う、っ」
横倒しにした俺の片足、腿に手をかけて高く持ち上げて。
「や、め…!」
「丸見え、だなあ?」
俺の身体に後方から身体を密着させた中沢は、
そのまま、後ろから俺の中に、いきり立ったものを突き入れた。
中には、まだ、アレが入ったままなのに…!!!
「…−−−−−−っ!」
「…っく、こりゃ、スゲーや」
そのまま、何度も突き上げられる。
出入りする感触と、奥で振動する快感、
すべてが俺を麻痺寸前まで追い詰める。
麻痺しきれないのは、俺の精神力のせい?
前に滑り込んで来た中沢の指が、俺の立ち上がってるソコ、掴んで。
「扱いて欲しいか?」
「…!」
ぶんぶん、と頭を横に振って。
でも、聞こえたのは含み笑いだった。
先を割った指が先端の裂け目をなぞって、
「生贄の気分はどうだ?」
「最、悪…だ、よ…っ」
「じゃあ最高にしてやるぜ」
そのまま、強く握りこまれて、小刻みに上下運動を続けられて。
「は、あ、ああっ…、ぅ、…ッ…」
「おら!足を閉じるんじゃねぇ!」
「っ…!!!!」
こんな、格好で、犯される、なんて…

そのままの体勢で一度直腸内に熱い飛沫を受けて。
仰向けで足を高く持ち上げられて、足首が肩に付くくらい曲げられて、
そこでもう一度、中に熱い液体を受けた。
「は、はぁ、っ、は…」
開放されて息切れを聞かせる俺の口元に、さらにソレを押し付けられて。
体中、口の仲間でも、全部…
「飲め、よ?」
雄の匂いに塗れて、俺は、せめて意識だけでも、麻痺させたい、だなんて、思っていた。




「気に入ったぜ。」
「ソレは、用意したかいがありました!」
先輩はニコニコしてて。
俺は、風呂を使わせてもらって、まだ湯気の上がる身体で、その横でふくれっつら。
匂い、取れやしねぇ!
先輩と中沢は、俺の狂態について二人で楽しそうに話し合ってて。
…俺は、その横で真っ赤になってうつむくしか。
「も、もういいでしょう、その話は!」
「いいや、純粋な反応でね、演技もなかったしな、久しぶりにいい思いをした、契約どおりだ、土地は売ってやる」
「ありがとうございます!」
先輩は、深々と頭を下げると共に、俺の頭に手をかけて一緒に頭を下げさせた。
なんで、俺までー!!!ありがたくもなんともなかったってのに!
目の前で、契約書と印が取り交わされるのを見て。
ソレがいつ終わるのか、早く、早くしろ、と心の中で急いていた。
だってよぉ。

「契約が終わるまで、ソレは中に入れっぱなし、抜いたらそこでおじゃんだからな」

中沢の言葉。
だから、俺の中、さっきの丸いの、入りっぱなしで…
「…っ」
身体を動かすと、中で動いちまって…
「…も、もう、終わり?…じゃあ…」
「…本当に入れっぱなしだったのか?」
中沢が俺を見て、困ったように、でもうれしそうに笑った。
「…隼人、スマン…」
先輩の目。
謝ってるって言うより、唾飲んでるような目で。
俺の、下半身見てねぇでくれよ…。

「さぁ、取り出してやるから、こっちに来い?」

…先輩と、中沢が同時に俺を見た。


その後、俺が身体をすべて解放されたのは、
暮れていた空が白んでくる時間だった。